『超ヤバい経済学』 スティーヴン D.レヴィット ・
スティーヴン J.ダブナー著 望月衛訳 2010年9月 東洋経済新報社
世の中、おおよそ下らないことにも経済的合理性が存在する。経済学といっても、この本を読んで金融がわかるわけでもないし、リーマンショックが引き金となった世界同時不況が理解できるわけでもない。ましてや、気が遠くなるほどの日本の財政赤字の解決策には、何の役に立たないことも保証付きである。
それはさておき、人の行動、社会の動きを経済学的な分析で眺めてみると、それなりの合理性を持って、そこそこ説明できるものである。おまけに、意外と世間の常識がどうもそうではなさそうだ、ということにも気がつく。この手のアプローチをマクロ経済学に対してミクロ経済学あるいは行動経済学という。
本書で取り上げた題材は様々だ。春を売っているお姉さんたちの行動、テロリストの見分け方、人の思いやりとは本当なのだろうかという疑問、環境保護法が種を絶滅の危機に追いやっている現実、二酸化炭素対策より地球温暖化防止に効果のある方法など、学問からは相当ほど遠いテーマに経済学的な考察を加える。おまけに、それぞれのテーマには全く脈絡がない。オタク的、社会学風、ミクロ経済学の検証の集大成(いや、「ごった煮」でしょう)とでも言っておこう。著者の言葉を借りれば、「あらゆるものの裏側の探索」である。
文章も相当に砕けており、インテリを自称する中年以上の方にはちょっと抵抗があるかもしれないが、読み出していけば、決しておふざけの内容だけではないことがご理解頂けるでしょう。
最後に、書評からはちょっと逸脱してしまうが、著者のダブナーは、ニューヨークタイムスのオピニオン・ページにフリコノミクス(ヤバイ経済学)のブログを書いているので、こちらを覗いてみるのも面白い。好奇心の旺盛な方は、是非どうぞ。<http://freakonomics.blogs.nytimes.com/>
この文章は、ビジネスネット書店「クリエイジ」の2011年6月27日の書評として掲載したものです。<http://www.creage.ne.jp/>