『チャイナズ・スーパーバンク』 ヘンリー・サンダースン/マイケル・フォーサイス著 築地正登訳 20144月 原書房

 

 

 なぜ中国の商品があれだけ世界市場を席巻することができたのか?日本人の多くは「値段が安いからさ」と答えるだろう。ついでに、「品質は悪いけどね」と少々のやっかみを込めて。

 

 確かにそれもあるが、中国政府が特定企業を資金面で強力に支援してきたからである。その役割を担ってきたのが中国開発銀行である。

 

彼らは、アフリカや中南米の開発途上国に対して莫大な額のインフラ整備資金を貸し付け、そのカネを使って進める建設工事は中国企業が受注する。融資返済の保証にも抜かりはない。ちゃんと相手国の石油や鉱物資源を担保に押さえている。担保として抑えた石油は中国の石油会社が引き取り、建設工事に必要な建機から設備機器に至るまで一切を中国のメーカーが輸出し、そして現地工事も中国が受注する。そのような中国企業も、開発銀行から低金利で融資を受け、資金的なバックアップを受けている。

 

 中国としては、鉱物資源を手に入れ、中国企業の輸出を伸ばし、勿論、貸した金は返してもらう。一粒で三度美味しいビジネスである。

 

しかも、世界銀行や西側の地域開発銀行のように、融資にあたって相手国に様々な条件を付けることはない。やれ、財政の規律だの、透明性だの、汚職や腐敗の防止だの、面倒くさい話は一切しない。中国はこれを「内政についての、一切の不干渉」と言う。反米主義の権化であったベネズエラのチャベス大統領などは、真の友人が現れたと欣喜雀躍したという。

 

 西側先進国の市場に対しても、資金面から支援することで、中国企業の進出を後押しした。

 

太陽光発電市場では、かつては日本のメーカーがシェアを抑えていたが、今やその面影もない。中国開発銀行は莫大な資金を自国の太陽電池メーカーに提供し、大規模な生産設備を作らせ、そして圧倒的な価格競争力を付けさせた。当然、供給過剰となった太陽電池の価格は暴落し、先進国のメーカーはばたばたと潰れていった。そして、残った中国のメーカーが世界市場を席巻した。ただし、価格の暴落で中国のメーカーも大きな赤字を被り、株価も暴落したが、どっこい国営銀行による資金的な支援のお陰で潰れることはなかった。もっともこれは、アメリカとEUで貿易問題を引き起こすというオマケがついてしまったが。

 

 日本では余り知られることのなかった「中国開発銀行」。二人のジャーナリストによるこのお話しは、読者を引きつける。

 

 

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