『習近平の権力闘争』 中沢克二 20159月 日経新聞出版社

 

 

今や日本の2倍の経済規模を持ち、米国と二大強国をなすのが中国である。

 

習近平が総書記の地位に就いた2012年以降、中国の政治の方向は大きく変わった。胡錦濤時代までの爪を隠して内に力を蓄える、すなわち国際社会で目立つことをせず、じっくりと力を蓄えておく「韜光養晦」という戦略を変え、外交は「中国の夢」、はたまた「米国との新型大国関係」を強調するに至った。そして日本と中国との関係も、非常に難しいものに変わったことはご存じの通りである。

 

一般の日本人には、その経歴を含めて、習近平という人物が明確に理解できているわけではない。江沢民や胡錦濤に比べて、強面、強権発動といった漠然としたイメージがあるくらいだろう。「虎も蠅も叩く」と言い放った腐敗撲滅の実施、そして戦争をも辞さないという態度で作り出した東シナ海と南シナ海における近隣諸国との緊張関係はその最たるものである。

 

習近平が目指すものは「青史留名」、つまり歴史に名を残すことにある。現状、国民の間で習近平の受けは良い。強面の外交政策は、国民のナショナリズム(中華思想)をくすぐる。そして、強権を持って進める反腐敗運動は、これまた政治家の特権や富の収奪に対して不満を持つ国民の溜飲を下げる。

 

習近平体制を盤石なものとするためには、政敵、とりわけ江沢民や胡錦濤の流れを組む勢力を政治の場から排除することが必須ある。薄熙来や周永康の失脚は日本でも知られるが、その他にも江沢民や胡錦濤を後ろ盾にした大物政治局員が次々と失脚した。旧勢力のもとで富を掴んだ石油閥や機械工業閥も、反腐敗の名の下にその政治力が奪われた。

 

その一方で、身の廻りを息の掛かった人物で固める、そう「お友達」で全てを固めることである。そのための手段が「腐敗撲滅」である。中国で本当に腐敗撲滅を進めれば、習近平の身内も監獄行きであるが、勿論そうはならない。

 

習近平の任期は慣例では2022年(10年任期)で終わることが暗黙の了解であるが、彼はそこで退くのであろうか。ケ小平や江沢民のように、主席の地位を退いた後も、事実上の最高権力の維持を狙うと見るのが自然であろう。

 

 

 

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