『シャープ崩壊 名門企業を壊したのは誰か』 日本経済新聞社編 20162月 日本経済新聞出版社

 

 

 シャープは、結局、台湾の鴻海に買い取られた。

 

支援交渉中には、鴻海からは雇用に配慮するとの方針が示されていたが、この512日には、社内に向けて人員削減の必要性があると言うメッセージが送られたという。現在シャープが置かれた状況からすれば、このような結果になることは想像に難くない。

 

 さてこの本、2月に出たばかりであるが、話は鴻海に買収される直前で終わっている。当時は、シャープの再生を産業革新機構の再建案で行くか、鴻海の提案で行くか、最後の決断に迫られていた時であった。そう言えば、私も210日に「シャープの身売り先」と題したブログを書いている。

 

 当時、シャープが傾いた理由は、液晶への過大投資という、言わば経営判断の間違いが命取りとなったという認識でしかなかった(そう思っていたのは、私だけだったのかもしれないが)。

 

この本が強調しているのは、破綻の原因が経営の内紛、つまり人事抗争による悲劇と捉えている点である。もちろん、シャープの命取りとなったのは、身の丈を超えた堺の液晶工場への過大投資であるが、なぜその様な経営判断に至ったのか、なぜそれを止めようとする力学が働かなかったのか、という点に踏み込んでいる。破綻に至るまでの歴代社長の行動を捉え、その時々の勢力争いの状況、そしてその時々の会長、社長、副社長の確執を細かく解説している。

 

 面白いのは(いや目から鱗と言った方が良いのかもしれない)、買収交渉を終始リードした鴻海のオーナー、郭台銘(テリー・ゴウ)のシャープの経営陣に対する見方である。シャープとは、即ち、リーダー不在、(鴻海との交渉で)何も決められない社長、そして、いっこうに煮え切らない不信感、というわけである。ある意味、日本型サラリーマン経営者による統治の最も悪い部分が出た結果でもある。

 

 社内人事抗争の結果、会社が傾き、最も惨めな思いをするのは従業員である。テリー・ゴウのリーダーシップの下、シャープの再生を祈るばかりである。

 

 

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