『パナマ文書 「タックスヘイブン狩り」の衝撃が世界と日本を襲う』 渡邉哲也 20165月 徳間書店

 

 

パナマ文書も今になると少々旧聞になりかけているが、オフショア取引、それに紛れて行われる不正蓄財や不正送金に対する各国間の連携と仕組み(グローバル規制)を知るには良い本である。

 

マネーロンダリングと租税回避を阻止するための米国や国際間の協力、そして日本の取り組みがうまく纏めてある。米国が行った経済制裁の対象となる国・法人リストの作成、そしてリストに掲載された対象と取引をした場合の米国銀行との取引の禁止といった対抗措置は、イランの核開発疑惑、ロシアのクリミア併合、北朝鮮の核・ミサイル問題などでお馴染みである。一方、我が国で言えば、まさにマイナンバー制度の導入による金融取引の把握が代表例である。

 

パナマ文書が世に出たことで様々な憶測が飛び交った。政治絡みで言えば、欧州のリーダー達の名前が続々と出て来たことで、アイスランドのように首相の辞任騒ぎにまで発展した。そういえば、スキャンダルの中には中国の習近平(の義兄)やロシアのプーチン首相(のお友達)の名前もあった。

 

一方、事実関係を理解するには良い本であるが、筆者の分析という点では、私の評価は少し低い。

 

パナマ文書がきっかけとなって、中国の反腐敗運動が失敗する(習近平も同じ穴の狢)、英国で反中国勢力が伸張する、ユーロ体制が瓦解するといった著者の期待感はちょっと安直すぎる。

 

加えて日本については、ゆうちょ銀行の「ゆるゆるの規制対応」と違法・不明な口座の存在に絡んで、特定秘密保護法の反対活動で名をはせたSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)、そして他の市民団体を取り上げて問題視しているが、この議論にはいささか著者の偏見があるとも感じる。(逆にそう感じるのは、私の偏見かもしれないが)。

 

それはそれとして、いわゆる新書サイズの本なので、手軽に読むことは出来る。

 

 

説明: SY01265_「古い書評」目次に戻る。

 

説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: 説明: door「ホームページ」に戻る。