『FAILING
FAST マリッサ・メイヤーとヤフーの闘争』 ニコラス・カールソン(著) 長谷川圭(訳) 2015年10月 角川書店
原本は、題名が『Marisa Mayer and the
fight to save Yahoo!』、2015年1月の発行である。ペーパーバックスでも字が大きく、行間が取ってあるので読みやすい。
題名はマリッサ・メイヤーであるが、内容はヤフーの歴史、とりわけ常に市場に翻弄され続けた経営、そしてその立て直しと失敗の年代記である。後半部分で、現在のCEOとなったマリッサ・メイヤーの奮闘が描かれる。
グーグルが市場で急速に成長するのとは対照的に、ドットコムバブルの崩壊、その後の経営難と、ヤフーの経営はまさにダッチロール状態であった。コンテンツの間の統一性はなく、社員は蛸壺状態になり、モラルも低下していった。とりわけPCがモバイル機器に移行する中で、ヤフーの対応は遅れた。
そんな中、グーグルのスター役員であったマリッサが2012年ヤフーにCEOとして迎え入れられる。
マリッサは社員のモラルを高めるために人事規則を変更し、コンテンツの改良を行い、新たな中核事業を作るためにM&Aも果敢に進めた。しかし、必ずしも全てが旨く言ったわけではない。コアビジネスを作るために多額のM&A投資を行ったが、成果はそれほど表れていない。人事改革で一時は社員の人望を得たかとも見えたが、彼女が作った人事評価システムは社員の不満を高め、一度上がったかに見えた社員のモラルも落ち込んだ。
また、マリッサの失敗はヤフーを立て直すために雇い入れたマネジャーが必ずしも有能ではなかったこともある。大金をはたいて引っこ抜いた人材であるが、大金をはたいてクビにせざるを得なくなった。というわけで、マリッサの評価は功罪相半ばであり、まだヤフーの経営が立ち直ったわけではない。
彼女は才能に秀でた有能な人なのだろう。半面、そのような人達によく見られる特異性がある。そう、アスペルガーの気質である。それが故に、彼女とぶつかった有能な部下はヤフーを去って行った。あれやこれやそんなお話しも盛り込まれており、読んでいて興味が尽きない。