『日本人は知らない中国セレブ消費』 袁静 20182月 日本経済新聞出版社

 

 

中国の裕福層を読者として日本観光の雑誌を出版する著者は、日本での長い生活経験と日本出版社での勤務経験を持つ、なかなかのビジネスパーソンである。

 

さて、昨年、日本を訪れた外国人は2869万人に達し、うち中国が736万人、台湾が456万人、香港が223万人であった。つまり、訪日外国人の半分は中国人である。

 

政府は訪日外国人の拡大に力を入れるが、実はその半分は中国人に依存している(中国だけでなくアジア地域という括りで見れば2472万人と、実に全体の86%を占める)。

 

そして中国人の旅行は、かつての団体旅行から個人旅行へと、その行動パターンが変わっている。その中核をなすのがプチ裕福層である。彼らの観光目的は、食事や温泉を楽しむといったように、今やモノからコトへと変わってきた。

 

日本人にとって、中国人旅行客のイメージには爆買いに立脚するステレオタイプな部分がある。しかし、上海や北京に行けば日本人並の収入を稼ぐ人達は決して珍しいわけではない。

 

例えプチ裕福層が国民全体の一割にも満たなくとも、なにせ総人口が日本の十倍あるのだから、数千万から一億人という数になる。

 

そんな彼らにしてみれば、日本の高級料理は安いし、高級ホテルも安い。しかも、中国国内と違って、偽物を掴まされたり、ぼったくられたりする心配もない。

 

著者はそんなプチ裕福層が持つ価値観、消費行動、そして日本のどういうところに感心し、物足りないと感じているかを紹介してくれる。と同時に、その背景にある中国社会の変化を説明してくれる。

 

中国人とは面子を気にする人達である(私の言葉に置き換えれば、見栄っ張りとも言える)。

 

そんなわけで、食事一つを取っても豪華さ、見栄えの良さが重要になるという。そして、人より目立つことは当たり前に大切である。つまり、彼らをもてなすには、日本的な「つつましやかさ」を正面に出しても受けない。

 

もう一つ、日本人には平均的な日本人の姿という概念があるが、それは中国人には当てはまらない。平均的な中国人というものはないと思った方がよい。

 

内陸部に行けば未だに貧しい人達は多く、日本と比較できないほど貧富の格差が大きい。加えて地域的な文化もまったく異なる。

 

そもそも北京語と上海語、そして広東語では、お互いまったく話が通じない。要は外国語と同じである。そのような上海、北京、広州の気質の違いについての説明はなかなか面白い。

 

新書版の僅か二百数十ページの本なので、週末にソファーでもひっくり返って読めば半日かからない。軽い読み物としてお勧めする。

 

 

 

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