『続 昭和の怪物 七つの謎』 保阪正康 20195月 講談社

 

 

昭和の時代の節目に現れた人物を筆者の目で評したものであり、2019年に出版した『昭和の怪物 七つの謎』の続編となる。

 

この続編では、三島由紀夫、近衛文麿、橘孝三郎、野村吉三郎、田中角栄、伊藤昌哉、そして後藤田正晴の7名を取り上げる。取り上げた7名のうち三島を除けば、残りの6名は表舞台であれ裏舞台であれ昭和の政治に深く係わっている。

 

保阪氏は、保守派からは日本史の中ではまだ学術的に定説がないと言われる「昭和史」に強い拘りを持つ。そして彼は、昭和の軍国時代の不条理さを追求するという執念とも見える拘りと、常にリベラルな思想を持つことに立脚して、社会を鋭く洞察する力を持った著述家であると、私は思っている。

 

この点は、昭和史にやはり強い拘りを持つ半藤一利氏と一脈通じるところが有るが、保阪氏の場合は個々の人物を取り上げて、各人の本質が何であったのか、それが日本の社会と歴史をどのように動かしたか、あるいは影響を及ぼしたかを鋭く描くという点で特徴が有る。

 

昭和を戦前と戦後に分ければ、前者は政治の理念や哲学が何たるものかを想像する能力すら欠いた軍人が政治に介入することで国を滅ぼした時代であり、後者は敗戦の混乱の後、保守合同のもとで自民党が日本の政治を動かした時代であった。

 

自民党一党による長期政権と言っても、その内部は一枚岩で纏まるはずもなかった。そこには派閥の間の壮絶な駆け引きがあり、派閥の領袖となった夫々の政治家の理念には、水と油ほどの違いがあった。

 

前篇と合わせて彼が取り上げた14名は良くも悪くも昭和の歴史に名を残した人物である。当然世間の評価は一つではないが、保阪氏の論には読み手を唸らせるものがある。

 

 

 

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