別れ (2006/10/14）
私も、家内も、もう50代半ばにあり、この年でまだ両親が健在であるという例は比較的少ないと、よく言われたものでした。しかし、今回、家内の父親を亡くしました。享年80歳でした。
私が結婚して間もなく、岳父は定年となり、その後はいわゆるご隠居さんの生活に入りました。彼は子供好きなこともあって、私の二人の子供たちは、小さかった頃にずいぶんと面倒を見てもらいました。私は結婚してからずっと湘南と横浜南部に住んでおり、彼の住む逗子から比較的近いところにいます。そんな環境にあり、家内が子供たちをよく実家に連れて行ったものものでした。
子供たちが小学校の低学年であった頃、夏休みには、逗子のお爺ちゃんと一緒に、家族揃って東南アジアやハワイに遊びに行ったものです。海外旅行に行くことは、彼にとってなかなか考えられないことでしたので、喜んで付いてきてくれました。小さな子供たちも逗子のお爺ちゃんが大好きで、ホテルのプールで一緒にふざけ合っていた光景を今でも覚えています。
その子供たちも、中学、高校と進むにつれ、逗子のお爺ちゃんと会う機会もだんだん少なくなっていきました。そうこうしているうちに、彼は胃にポリープが出来ていることが分かり、二回ほど入院を繰り返し、結局、胃を摘出することになってしまいました。そんなことから、もう一緒に旅行する機会もなくなりました。
今や、二人の子供たちも大学生となり、横浜からは遠く離れてしまいました。そのような中、この夏には、ガンが肝臓に転移したために、彼が入院したという知らせがいきなり入りました。たまたま、夏休みに帰省した二人の子供たちは彼を見舞いに行ったものの、容体が決してよくないことは容易に推測できました。かつてはあんなに太っていた逗子のお爺ちゃんは、見る影もなく痩せ細っていました。
入院して数週間がたち、10月となりました。私は仕事があり、先週の日曜日の5日からジャカルタに出張しなければなりませんでした。前日の土曜日に病院に行きましたが、金曜日から容体が悪化しており、担当医からは、持っても一カ月、この一週間くらいが危ないかも知れないと知らされました。
彼の死が伝えられたのは、私がジャカルタに入った翌日でした。残念ながら、私は告別式に出ることが出来ませんでしたが、二人の子供たちは、お通夜と告別式に間に合うように急遽帰ってくることが出来ました。家内からは、上の息子は、告別式の間、ずっと涙を流していたという内容のEメールが届きました。
子供たちにとって、身内の死は初めての経験であり、悲しみも大きかったことと思います。もう大人とはいうものの、二十歳そこそこの子供たちにとっては、人生には将来の大きな夢がある半面、過去との永久の別れもあることが、実感としてなかなか受け入れにくいことなのかもしれません。
逗子のお爺ちゃんの冥福を祈ります。
