解散総選挙 (2012/11/26)
野田首相はついに衆議院解散のカードをきり、各党は12月16日の選挙に向けて走り出した。支持率が下がり続けた民主党には、3年前の勢いは全くない。もっとも自民党とて、状況がよくなったわけでもない。支持率で見れば、民主党に比べれば高いが、とても単独で、いや、単独どころか公明党と連立しても、議席の過半数を確保できる状況にはない。
第三極となる橋下徹の日本維新の会は、話題性は高いが、どの程度議席を獲得できるのかという現実問題になれば、政局を左右する力はない。新聞記事によれば、議席の過半数を取るに必要な数の候補者を立てることも難しそうという。
かつて自民党や民主党に籍を置いた人たちも、新党を結成し、あれやこれやの政策を打ち出している。よく言えば百家争鳴であるが、話を聞けば、具体性や実現性の点で、時代の流れについて行けなくなっているとしか思えないような方々も多い。とりわけ、60歳を過ぎたご老体の政治家には、とても今日本が抱える問題を解決する能力はない。ましてや、70代を超えた老人たちは、言わずもがなである。
おそらく自民党が第一党の地位を確保するのであろうが、公明党と連立しても、衆参両院共に単独過半に及ばないとなれば、下手をすれば、これまでと同じ決められない政治が続くことになる。
個人的に一番気になっているのは、自民党の安倍総裁がナショナリズムを煽る発言を繰り返している点である。美しい日本もよいが、それは道徳の世界の話にとどめておいた方がよかろう。歴史問題では「自虐史観」を強調するが、中国や韓国ばかりではない、他のアジア諸国も、彼の意見には絶対に同意しないだろう。
もう一点、景気回復でいろいろと思いつきを発言しているが、安倍総裁が本当に経済を理解しているのか、相当疑問がある。景気浮上に公共投資に200兆円投入するとか、国債を日銀に買い取らせ、紙幣をどんどん印刷させるなどと言い出した。おっしゃるとおり、デフレをインフレに変えることはできるでしょう。しかし、一つ間違えば、給与は上がらず、物価だけ上がり、しかも金利の上昇で、民間の資金調達を締め上げることになりかねない。もっともこの国債買い取りの話、日銀の白川総裁の反論を経て、舌の根も乾かないうちに、「日銀は独立しているから、彼らが決めていく」と発言が大きくトーンダウンしてしまった。
一方、徹底的に叩かれ続け、政権支持率もがたがたになった野田首相であるが、私、個人的には彼を評価している。耳あたりのよい言葉を並べ立てた「マニフェスト」と、あの呉越同舟の議員で成り立っていた民主党政権の長として、消費税値上げを通し、TPP賛成を明確に打ち出したことは立派であった。一般会計予算80兆円なにがしほどに対して、税収は半分の40兆円しかない。それと同額の国債を発行し続けるのは異常な話である。どこかの時点で、破綻するのは目に見えている。そもそも、GDPの二倍に膨れあがった国債を償還することなど不可能である。永久に既発債の借り換えを続け、税の増収とインフレによる目減りで、国債依存比率を下げるしかない。
さてさて、12月16日の結果が楽しみである。