角館 (2007/12/25)
仕事の合間に、かみさんと二人で真冬の角館を訪れてみた。映画「たそがれ清兵衛」で有名となった秋田の古都である。戦災がなかったことと、これまで大都市のような大開発がなかったことから、江戸時代の町並みがそのまま残されている。
町も観光に力を入れており、古い文化財が手厚く保護されている。また、映画で有名になったことは事実であるが、それに乗じて観光地として売り出そうという押しつけがましさはどこにもない。町中はきれいに掃除されており、非常に気持ちがよい。簡素な美しさだけがそこにあり、大都会の雑踏とは全く対局の世界である。
武家屋敷は、観光ルートの基本どおり最も広い敷地を持つ青柳家と隣の石黒家を訪問してみた。藁葺き屋根、石と土の土間、太い梁に支えられた高い天井。確か、こんな造りの家は、私の子供の頃には近所にもあったのではないだろうか(ちなみに私が育ったのは名古屋である)。確かに蔵のある家並みは、見覚えのある景色である。しかし、大都会では、経済成長と開発に伴い、そのような家並みはいつの間にか消えていってしまった。
角館の町の中にはそれほど多くの宿があるわけではないので、幾つかをウェブで検索し、角館駅に隣接するフォルクローロ角館という宿を取った。いわゆるビジネスホテルの造りであり、決して豪華ではないが、値段は手頃、行き届いたサービスを提供してくれる。フロントの係の女性は非常に親切で、武家屋敷の中を見たいのであれば、閉館が何時なので今からでも十分間に合う、あるいは公営の駐車場がこの場所にあるので、歩いても5分もかからずに行くことが出来るなど、いろいろと教えてくれた。
郷土料理も見知らぬ土地を訪れたときの楽しみの一つである。別に、下調べをしてきたわけでもないので、町のどこに美味しい店があるかなど分からなかったが、たまたま手にしたパンフレットの中にあった「しちべい」という店に入ってみた。観光シーズンからは大きくずれているために、その晩の客は私ども夫婦一組だったのではないだろうか、と思われるほど空いていた(別に、この店だけの事情ではなく、そもそも雪の降り始める12月に角館を訪れる人はほとんどいない)。
店の主人は非常に親切で、私たちの話し相手になってくれた。彼は元々洋食のコックであり、その後和食の道に入っていったとのことである。若い頃に東京で修行していたのだろうか(と、話の端々から勝手に推測させていただいた)。確かに、料理は純粋の和食ではなく、創作ふうのものを出してくれる。ちなみに、かみさんはちょっと豪華なお弁当、私は鍋(当然、きりたんぽが入っている秋田風のもの)と酒のつまみに単品をいくつか頼み、地酒をちびりちびりと楽しんだ。非常に楽しいひとときであった。
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武家屋敷の通り。観光シーズンから離れた12月の中旬なので訪れる人もほとんどいない。 |
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田町武家屋敷通りにある西宮家の庭とお蔵。これから大雪を迎えるため、家の周りは板囲いが施されている。 |
上の写真は雪もほとんど無いが、私が横浜に帰った数日後には大雪が降り、町の中は白一色に覆われたようである(町の観光協会のウェブにそのような景色が出ている)。実は、私はこの時、車で出かけたのだが、タイヤは普通のラジアルであり、もし、ここを訪れるのが数日遅かったら、雪の中で大変な目に遭っていたかもしれない。