「加計学園」を巡る(怪)文書 (2017/6/16)
これこそ、誤魔化せば、誤魔化すほど、泥沼にはまり込むという好例である。しかも、教育の元締めであるはずの文部科学省の醜態であった。
この文書、当初、菅義偉官房長官は「怪文書みたいな文書」と仰り、その存在を証言した元前川文科省事務次官について人格を貶める発言をすることで、逃げ切ろうとした。残念ながら、そんな姑息な真似をしたが故に、ここまで追い込まれてしまった。
この前川氏の人格を貶めるという弥縫策に一役買ったが読売新聞であった。例の「出会い系バー」の暴露記事である。5月22日の朝刊で、東京、大阪、福岡の各本社の紙面で同様に取り扱った。当時、加計学園問題が安倍政権にとって、厄介な問題になり始めた時期である。
読売の記事については、いろいろな噂がある。首相官邸から意図的にスキャンダルがリークされ、それに読売新聞が飛びついた。あるいは、元々、政府自民党寄りの右派のメディアと世間から見られている読売新聞の上層部が、安倍政権におもねって記事にするように社内で指示した、などである。
読売新聞も、ばつが悪かったのだろう。6月3日に東京本社の社会部長名で弁解の記事を掲載した。しかし、余り説得力のある言い訳ではなかった。
そもそも、政府の意向で次官を辞めさせられた前川氏は官僚として既に過去の人であり、何ら権力を持つ人間ではない。その過去の人物のスキャンダルを載せて、「公共の関心事であり、公共目的にもかなう」と言ったところで、どれだけの人を納得させられるのか、甚だ疑問である。
安倍政権を助けるためか、あるいは恩を売るために、出会い系バーに行ったことを取り上げて、前川氏があたかも売春をしていたかのような印象を与えることが目的であった、と考える方が自然というものである。
むしろこれからが重要であろう。
文書が出てきた以上、内閣府の誰が「首相のご意向」を文科省に押し付けようとしたのか、今流行の言葉を使えば、内閣府の役人の「忖度」でそうなったのか、あるいは本当に首相のご意向があったのか、これこそ「公共の関心事」である。それを明らかにすることこそ「公共目的にかなう」というものである。