加熱式タバコ (2017/12/25)
タバコ飲みもタバコ会社も肩身の狭い世の中である。タバコは有害、そして周りの受動喫煙者の健康を守れというわけで、今やタバコは世間の目の敵である。
そこでタバコ会社も生き残りをかけて、より害の少ないタバコを開発した。いわゆる加熱式タバコである。タバコが発する発がん物質はタバコを燃焼させたときに発生するので、燃やすのではなく暖めてニコチン成分を気化させれば、有害物質の発生が抑えられるというわけである。
では加熱式タバコはどれだけ害が緩和されたのだろうか。英国政府の諮問機関は、加熱式タバコは健康的ではないものの、通常のタバコに比べれば有害度は50%〜90%小さいと結論づけた。フィリップモリスジャパンは、自社の製品では有害物質が約90%低減していると述べている。
一方、この加熱式タバコを巡る規制は各国様々であるが、状況は厳しい。ざっと世界を見渡せば、シンガポール、タイ、ブラジルでは加熱式タバコは完全に禁止である。米国は州によって規制が異なる。ニューヨークは今年10月から職場、バー、レストランでの加熱式タバコを禁止した(全米で11番目の禁止州となった)。フランスも同様の措置を取っている。そして世界保健機関(WHO)の反タバコグループも、加熱式タバコは規制か禁止にすべきと提言している。
さて、日本はどうだろうか。厚生労働省は有害物質が蒸気に含まれており、科学的解明が進むまで規制が必要という立場である。東京都は公共施設や飲食店などの建物の中を原則禁煙とする罰則付きの受動喫煙防止条例制定を目指しているが、加熱式タバコの取り扱いでは判断が揺れている。
先日、小池知事は都独自の条例案でも加熱式たばこは規制の対象になるものの、罰則を付けるかどうかは、慎重に対応するという考えを示した。その理由は加熱式タバコの有害性がよく分かっていないことにある。また、条例制定にあたって行った意見公募の中で、加熱式タバコへの規制に反対する意見が多く出たことがその背景にある。
結論から言えば、加熱式だからといって世間様は大目に見てくれそうにない。確かに有害物質は削減されたのであろうが、そもそもニコチンを吸うことがタバコの目的である事に変わりは無い。現在、加熱式タバコの税率は通常の紙巻きタバコより低くなっているが、政府・自民党は来年度から順次税率を上げていく構えである。もっとも、これは有害性の議論から来たものではなく、加熱式タバコの市場が拡大(注)しているので、しっかりと財源として確保しようというものである。
(注)日本での加熱式タバコが全タバコに占める比率は18%であるが、2020年には30%を越える。(JT推計)