『絶対悲観主義』 楠本健 20227月 講談社+α新書

 

 

副題に「心配するな、きっとうまくいかないから」とある。何やら斜に構えた書き出しであるが、この本、れっきとした一橋大教授が書いた随筆である。

 

先生は、14の題材で人生論を語る。読んでいけば、なるほど人生をこんな感じで捉えれば、生きやすくなるし、幸福感も得られようと、ついつい同感してしまう。

 

「幸福の条件」がちょっと心に刺さる。人生を微分で捉えるか、積分で捉えるかというお話は、なかなか本質を突いている。

 

先生の定義に従えば、微分派とは⊿tなる時間に対して得られた成果の増分⊿f(t)に至福の喜びを見いだすという生き方である(ちなみに、先生は説明にこのような数式は使っていない)。平たく言えば、人より早く昇進し、人より早く昇給することに幸福感を味わうことである。しかし、日々、大きな微分勾配⊿f(t)/⊿tが追求できるわけではない。ゼロが続き、ある時はマイナスかも知れない。微分量だけを追求し続けると、私などは疲れてしまう。

 

一方、先生が選択する積分派の生き方とは、t=t0からt=tnまでの積分量でこれまで歩んだ人生を振り返るものである。その時々で見れば微分勾配にプラス・マイナス(嬉しかったとき、辛かったとき)はあろうが、様々な思い出を振り返ってみれば、そこには多くの幸福がある。

 

このお説、私の心にグッと染みる。

 

と、こんな調子で話題を変えつつ世の生き方を語ってくれる。もちろん、先生のお説とは真逆な生き方に価値を見いだす人もいようが、私を含めて、凡人の域を出ないのであれば、人生、片意地張らずに、飄々と己が進むべき道を追求していった方が幸せだろう。

 

 

 

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