『闇の盾 政界・警察・芸能界の守り神と呼ばれた男』 寺尾文孝 20216月 講談社

 

 

1980年代後半のバブル期を中心に、あの当時日本で起きていた様々な事件を回顧録風に書き下ろしたノンフィクションである。

 

内容は少々手前味噌で、自慢話もあるが、「そうか、バブル経済とはそんな時代だったのだ」と思い起こさせる。昨年、中国で起きた恒大集団の騒動ではないが、35年ほど前、日本中が土地と株価への投機で熱のように浮かれていた。

 

そんな社会を背景に、伊藤萬事件(イトマン事件)という、今ならばちょっと信じられないような詐欺、背任事件が起きた。そこでは何百億円という金が動き、それに群がるようにヤクザや詐欺師、政治家、官僚、そして一流銀行の経営陣も係わっていた。不良債権で破綻した長期信用銀行もその一つであったし、流石に潰れるような事態にはならなかったが、当時の住友銀行も商社のイトマンの経営に深く関わっていた。

 

今でこそ反社会勢力が社会経済活動に介入してくれば、それを受け入れた企業も厳しく罰せられるが、当時は暴力団が企業経営に介入してくることは、さほど珍しいことではなかった。不正融資という形で銀行からヤミ世界に金が流れ、地上げや株の買い占めによる企業の乗っ取りが行われた。一流企業の株式総会では総会屋が議事を取り仕切ることが当たり前のように行われていた。そこに登場する総会屋は、言わずもがな反社会勢力と結びついていた。

 

著者は元々警察官であったが、警察を辞めた後、政治家の秘書、不動産業、さらにはバブル期の債権回収という少々特異な経歴の持ち主である。そんな世界を泳いで行くには、政治家、霞が関、とりわけ警察や検察との人の繋がりは欠かせない。そんなわけで、一連の話の中には当時の企業経営者、政治家、様々な会社や団体に天下っていった役人の名前が実名で出て来る。金に群がる者、地位と権力に固執する者、それは政治家やヤミ世界だけでなく、霞が関の官僚にも当てはまった。

 

数々の不正金融事件、表と裏世界の繋がり、そこに係わった人達の人生を含めて詳細が語られる。インターネットで当時の状況を調べてみると、誇張はあっても、ここで書かれた内容に偽りは無いようである。何やら小説のような話ではあるが、バブル当時に本当に起きていた出来事である。

 

今となって思えば、バブル時代とは全てが金に狂った時代であった。私には良い時代だったという記憶はない。

 

 

 

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