米中貿易戦争と世界経済への影響 (2019/10/19)
ここに来て、米中間の貿易戦争で若干の折り合いが見えかけたことで、ニューヨーク市場、そして東京市場でも株価が上がり始めた。といっても、先行きへの不安感が消えるにはほど遠い。
そんな中、先日国際通貨基金(IMF)が最新版の世界経済見通しを発表した。IMFは通常春と秋にこの見通しを改定する。今年の10月版では4月の予測を0.3ポイント下げ、2019年の世界経済の伸びは3%と、リーマンショック以降、最低になるものと見ている。2010年は少し上向くがそれでも3.4%にとどまる。
世界経済の落ち込みにはいろいろな要因はあるが、米中の貿易問題、というよりもトランプ大統領が中国に仕掛けた輸入関税の引き上げが与えた影響が大きい。
2018年時点で、すでに世界経済の伸びは弱まっていたところへ、2019年に入って、トランプ大統領は中国製品に対する輸入関税を大幅に引き上げた。
これに対抗して、中国も米国からの輸入品に対して関税を上げたことで、世界的にビジネス心理と環境は悪化し、企業の投資意欲は削がれた。その結果、事業者はビジネスリスクを取ることを躊躇し、さらには金融市場にまでその影響が及んだ。
今週のエコノミスト誌は、これら諸々の影響が2010年の米国のGDPで0.6%、中国のGDPで2%に及ぶと分析している。パーセンテージで見ればそれほど大きな数字ではないが、貿易戦争の結果負うコストに換算すれば米国が1250億ドル(13兆5000億円)、中国が3000億ドル(32兆4000億円)と膨大な額になる。
一方、中国国家統計局が昨日発表した今年第3四半期のDGPの伸びは6%であり、1992年以降の最低となった。明らかに中国経済への影響が現れている。
このような景気の落ち込みは、米中ばかりではない。IMFの予測では、EUユーロ圏のGDP成長率は今年が1.2%、来年が1.4%である。日本は今年が0.9%、来年は0.5%と、先進国中最も低くなると見られる。