When They Call You a Terrorist: A Story of Black Lives Matter and the Power to Change the World, Patrisse Khan-Cullors and asha bandele, May 2021, Canongate Books

 

 

この本に、日本語の翻訳版は見当たらない。

 

「ブラック・ライブス・マター(BLM1/)」という言葉は、日本人の多くにとって2020年にミネソタ州ミネアポリスで起きたジョージ・フロイド事件が切っ掛けと映るが、実はこの運動の歴史はもっと前に遡る。2010年代前半、黒人が警察官に不当に殺害される事件が相次ぎ、BLM運動が起きた。

 

著者のパトリッセ・カーンはBLM運動を立ち上げた人々の1人である。彼女の主張には、黒人への差別と抑圧の停止、ロサンゼルスの刑務所廃止だけでなく、LGBT2/に対する偏見の排除も含まれる。

 

黒人問題の根本には、黒人が置かれた劣悪な生活環境があり、そんな中で黒人は麻薬中毒や犯罪に手を染め、そして家族が崩壊していく。黒人の多くは貧しさゆえに教育が受けられない、その結果、低賃金の下働きの仕事にしか就くことが出来ない。結局、子供達に前向きな人生が歩めるような人生感を育むことすら難しくなっている。貧しさ、犯罪、麻薬中毒の連鎖である。それは彼女の家族の中でも起きた出来事である。

 

彼女には、黒人であることを理由に不当に長く刑務所に留め、犯罪と刑務所の行き来を繰り返させるのではなく、犯罪の厚生に力を入れるべきと言う根本的な考えがある。麻薬中毒患者についても同じである。今のシステムは、中毒者を社会復帰させるための十分な対策を与えていない。ただただ長く拘束するだけである。中毒患者は精神的に追い詰められ、自殺に行き着く者もいる。その事例が黒人に顕著である。

 

これは日本人にはなかなか想像できないし、読んでいると絶望的な気持ちになる。

 

彼女の人生観は相当ぶっ飛んでいる。自ら一夫一婦主義者ではないと言い、結婚して子供が出来たものの、子供を巡る考え方が合わない夫とさっさと別れる。そしてレズビアンの女性と結婚し、前夫との子供を育てる。日本人の人生観ではなかなかついて行けないが、自らの人生を追求するという強烈な強さがなければ、警察と対峙しても「テロリストと呼べばいい。私はやるわよ」と叫びつつ社会運動を引っ張っていく力は無いのかも知れない。

 

 

1/     BLM: Black Lives Matter

2/     LBGT: Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender

 

 

 

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