What is life? 生命とは何か』 ポール・ナース(著) 竹内 薫(訳) 20213月 ダイヤモンド社

 

 

原作も同じタイトルの『What Is Life?: Understand Biology In Five Steps』である。原作は僅か100ページほどの短い作品であるが、翻訳本は270ページとなっている。一般に英文と和文であれば、漢字が混じる和文の方が短くなるが、私は翻訳本を読んでいないので何故そうなのか分からない。

 

原作は、ちょくちょく出て来る専門用語に引っかかるものの、英語自体は難しい言い回しがないので読みやすい。生物学と言わず科学に関心のある方なら面白く読めるだろう。なぜ生物が出来上がったのか、その進化のなかで遺伝子がどのように機能し、さらには遺伝子情報がどのようにして次世代に伝えられて行くのか、その仕組みを説明してくれる。

 

生物は、何かの切っ掛けで変異体ができるという過程を通して進化する。最初に現れた単細胞は多数の細胞で構成される生命体へと進化した。その時間軸を逆戻りさせてみよう。地上の頂点に立つ人間も生物の樹木図を遡れば、他の生物と同じ根に辿り着くという。

 

そんな純粋に科学的な話から、哲学にまで入り込まなければ解決できない問題、まさに我々が直面する環境問題にまで話が及ぶ。抗生物質に耐性を示す菌の増殖、人の活動による種の絶滅、そして地球温暖化などは、まさに人間が創り出した厄災である。

 

著者のナースは、これから生命を解明して行くには、これまでのように生物学だけではなく、科学、物理、統計、さらには哲学と言った学際的なアプローチが不可欠という。今現在、世界中を混乱に陥れているコロナウイルスの蔓延と各国の混乱を見れば、まさにそのとおりだろう。

 

ちなみに、ポール・ナースはノーベル賞を受賞した碩学の徒であるが、彼は大学入学に失敗し、10代後半の一時期、研究室の技師として働いていた。入学で弾かれた理由は、フランス語が苦手であったからという。今様に例えれば、センター試験で英語の成績が悪く、入試に失敗したといったところだろう。しかし研究室で頭角を表したことで、数年遅れで大学に進み、ついには偉大な生物学者となった。

 

つくづく思うに、偏差値だけでしか能力評価できない多様性を欠いた日本の教育システムでは、彼のような真の逸材は葬られてしまうのだろう。日本の科学の将来が不安である。

 

 

 

 

 

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