ウクライナ戦争2年経過 (2024/3/5)
ロシアのウクライナ侵略が始まって2年が経過した。現状は膠着状態にあり、欧米からの支援、とりわけ米国は新年度の支援予算が議会で止まったままになっており、弾薬の補給が進まない。
ロシアはウクライナが解放した地域を僅かずつ奪還し始めた。圧倒的な兵力と弾薬量の差から、ウクライナは一部撤退を決め、そして2月17日にロシアがドネツク州のアヴディーイヴカ1/を占拠した。ここは戦略的にそれほど重要な場所ではないが、プーチンにとって大きな宣伝材料となった。とりわけ3月に大統領選を控えており、彼は戦争開始2年目の大きな成果として国内向けにこれを利用している。
ウクライナは兵が疲弊しており、かつ弾薬も不足している。貧弱な塹壕での闘いで、負傷者も増えている。そしてロシアはアヴディーイヴカから更に西のラストーチェキン2/に兵を進めた。
戦況はロシア優位になっているが、ウクライナ軍の戦線が崩れるかと言えばそうでもないと西側軍事筋は見ている。ロシアもウクライナ戦争に必要な弾薬が十分ではない。現状でロシアは国内の生産能力と北朝鮮からの供給能力を超える弾薬を消費している3/。また、ウクライナの素早い動きを押さえるには、ロシアはまだ軍の指揮能力と練度が十分ではない。
では今後の戦況はどうなるのだろう。軍事分析の専門家は、ロシアはまだ大規模な侵攻を進める能力を維持していると見る。短期的には、ロシアがザポリージャ州のロボティーン4/を奪還する能力はないが、両軍の能力と兵員数の差は大きく、南部の占領地を少しずつ拡大するだろう。
全体を見れば、ウクライナの状況は悪化している。ウクライナはもっと多くの兵員と弾薬が必要である。前線の兵士は疲弊しており、彼らを一度後方に戻さねばならない。一方、ロシアは更に侵攻を進めるだろう。しかし、それには目から涙が出るほどのコストが掛かり、かつ持続可能なものでもない。
ロシアの一般市民はプーチンの戦争をどう捉えているのだろうか?プーチンの軍国主義と一般市民の元の生活に戻りたいという思いとの間のギャップは確実に拡大してきている5/。
西側はウクライナを見捨てるべきではない。しかし、現状のEU諸国の弾薬供給能力は低く、米国はといえば、大統領選を控え今やトランプ党となった共和党がウクライナ援助予算に同意せず、支出できる資金が枯渇してしまった。
1/ Avdiivka
2/ Lastochkyne
3/ The Economist, The War Room (2024/2/27)
4/ Robotyne
5/ The
Economist webinar, “Ukraine
at war: two years on” (2024/3/23)