世界経済見通しと日本の将来 (2024/11/5)

 

毎年恒例のIMF1/の世界経済見通し(WEO2/)が10月に改訂された。

 

予測数字は、昨年、今年、そして来年の短期見通しと、2029年の中期見通しである。図からわかるように、パンデミック明けの昨年の日本の経済成長率は先進国の中では米国に次ぐ高さとなったが(と言っても1.7%にすぎない)、今年はドイツに次ぐ低さで、1%には遠く及ばない0.3%である。それより深刻な問題は中期的な展望である。5年後の2029年の予測は僅か0.5%にとどまる。

 

一方、韓国は今年以降2%を超える成長を維持するものと見られる。我が国との差は何であろうか。やはり先端技術を基礎とする産業の強さが、経済成長に繋がっているのだろう。日本の経済を支えているのは自動車・輸送用機械、その中でもトヨタへの依存が極めて高い。かつては自動車と並ぶ産業であった電器機械はとうの昔に壊滅してしまった。

 

最先端技術の一つ、半導体生産では、世界に通用する日本企業はイメージセンサーのソニー、フラッシュメモリーのキオクシア、そしてパワー半導体のルネサスエレクトロニクスくらいだ。半導体設計では米国と比較するのもおこがましく、半導体製造では韓国や台湾から完全に引き離されてしまった。

 

人工知能の分野では、米国と中国が圧倒的に先を走っており、この分野で日本の存在感は乏しい。

 

つまり、日本には過去から現在に至るオールド産業の延命はあっても、将来を見据えた世界に伍する新規産業の創出が見えない。当然、産業の付加価値の向上も期待できない。

 

今の時代、技術競争も市場競争も地球規模での闘いだ。全てを自前で、日本人だけで、そして日本の企業だけで新しい産業を興すことはもはや無理な話である。日本が海外から優れた人材を取り込み、かつ海外から日本国内への投資を促進することは必要不可欠である。アメリカのIT産業をささえているのが多くの移民であることを見れば、それは明白である。

 

残念ながら、今の日本にそれが出来ているとは思わない。日本の社会には外国人や外国資本に対する潜在的な抵抗感や時には嫌悪感があり、それは江戸時代と変わらない島国根性からくるものではないかと、私は思っている。

 

日本の人口と市場規模を考えれば、国際貿易のみならず、日本から海外へ、そして海外から日本への投資に依存しなければ、日本は生きてはゆけない。日本が抱える喫緊の課題、とりわけ出生率の低下、人口の縮小、それに伴う高齢化社会を考えれば、移民の受入も必要であろう。

 

移民とは外国研修生や実習生に代表される目先の労働力の確保という話ではない。高度な能力を持つ人材をいかに日本に引き寄せるか、今やそれを本気で考える時だろう。しかし、残念ながら高度人材と呼ばれる人達にとって今の日本に魅力は乏しく、能力のある多くの人は欧米への移民を志向するという現実がある。そこには報酬(給与)だけでなく、移民にとって日本で本当にキャリアパスが開かれるのかという切実な問題がある。

 

日本が衰退国家になる前に、第二の開国を真面目に考えるべきだと思っている。

 

 

 

1/     International Monetary Fund, 国際通貨基金

2/     World Economic Outlook

 

 

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