2023年の世界経済見通し (2023/2/4)
先月末、国際通貨基金(IMF)は世界経済見通しを更新し、その結果を発表した。世界的なインフレの進行とロシアによるウクライナ侵攻といった問題ゆえに、現状、経済成長は歴史的な低さにとどまる。とは言うものの、IMFは今年の経済成長は低迷するが、来年は上昇に向かうと見ており、昨年の10月の見通しに比べれば、好転している。
先進国についておしなべて言えば、労働市場は活況、家計の支出や企業の投資は堅調、欧州のエネルギー危機も当初言われていた状況に比べればうまく対応できている。昨年第3四半期は意外と経済成長が保たれており、インフレもピークを過ぎた。
そのような状況から、IMFは経済成長を少し上方修正した。世界経済の伸びは2022年の3.4%が2023年は2.9%に低下するが、2024年には3.1%に戻る。
この成長を牽引するのは中国とインドの二カ国であり、世界経済の成長への貢献で半分を占める。中国の経済成長は2022年の3.0%が今年は5.2%、来年が4.5%である。インドは、同じく昨年が6.8%、今年は6.1%、来年は6.8%という見通しである。
一方、先進国の景気停滞は顕著であり、2022年の2.7%という成長が今年は1.2%、来年が1.4%にとどまる。先進10カ国のうち9カ国は、経済成長が減速する。
米国の経済成長は、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが経済に影響を及ぼすことで、昨年の2.0%が今年は1.4%にとどまり、さらに来年の予測は1.0%にすぎない。
面白いのは、先進国の中でこれまでは一番成長できなかった日本が、今年だけで見れば、米国の1.4%を凌ぐ1.8%の成長になると予測されている点である。もっとも、ドイツとフランスの経済は回復し、来年の経済成長率はそれぞれ1.4%と1.6%を達成すると見られる。これは、日本の0.9%を越える。
IMFが言うように、当然、不安定要因は残る。中国は昨年末、いきなりゼロコロナ政策を撤廃したが、コロナ蔓延の次の波が来る可能性は想定できる。また、不動産バブルの経済への影響が予想以上に顕在化する可能性もある。
先進国のインフレはピークを過ぎたようではあるが、労働市場の逼迫、それにともなう人件費の上昇圧力があり、中央銀行による金融引き締め、その結果起きる経済のスローダウンという事態もありうる。
さらに先行不透明なのが、ウルライナ戦争の行方である。様々なニュースを見ていても、今年中に戦争が終わるという可能性は極めて低い。
さて、経済予測からいきなり話は飛ぶが、今から百年前に世界中でスペイン風邪がはやり、その後世界的な不況が訪れ、そして世界は戦争に向かって流れて行った。今、我々が経験しているコロナ禍、経済の落ち込み、そしてウクライナ戦争、さらには台湾有事の可能性といった地政学上の争い考えれば、何やら今の世界、百年前からそれほど進歩していないようにも見える。