経済見通し (2023.4.20)

 

 

この一年間、世界経済は大きく揺さぶられた。

 

3年にわたるコロナ禍の傷跡とロシアのウクライナ侵略がもたらした影響は、未だに色濃く残っている。米国はコロナ禍からの回復が早かったものの、労働需給の逼迫、需要の増加に比べて回復が遅い供給力、そしてコモディティ価格の上昇といった要因が重なり、急激なインフレが起きた。これは欧州諸国でも同じで、天然ガス供給の遮断に端を発したエネルギー価格の上昇と食料品価格の上昇が消費者物価を急激に押し上げた。

 

昨年の米国の消費者物価の伸びは8%、英国は9.1%、ドイツは8.7%という歴史的なインフレである。長きにわたってデフレに悩んだ日本も、欧米に比べれば遙かにましとはいうものの、2.5%の消費者価格の上昇となった。意外なのは、中国が僅か1.9%のインフレにとどまった点である。これは中国政府がゼロコロナ政策を頑なに押し通し、年末まで消費活動が抑えられた結果である。(表1参照)

 

米国連邦制度理事会(FRB)は貸出金利を急速に上げ1/、インフレ抑制を最優先した。そして欧州中央銀行もこれに倣った。そんな中、米国ではシリコンバレーバンクが、欧州ではクレディスイスが破綻するというリーマン以来の金融不安が起きた。それでもFRBの高金利政策はまだ変わっていない。

 

つまり2023年を取り巻く経済環境には、未だに引きずっているサプライチェーン混乱からの回復の遅れ、先の見えないウクライナ戦争の行方、落ちついたとは言えエネルギー価格の先行きの不透明さがある。インフレ基調はここ数年続くのだろう。

 

では経済の伸び(実質GDP成長)はどうであろう。IMFの予測を引用すれば、G5で見れば今年は米国の1.6%成長に日本の1.1%が続くが、英独仏はマイナスか1%を下回る。来年2024年には欧州も経済回復するが、G5は押し並べて1%程度の成長にとどまる。

 

ゼロコロナ政策を止めた中国政府は、今年の目標を5%程度に置いた。中国統計局が発表した今年13月期のGDP速報値は前年同期比4.5%に回復しているが、まだ政府目標を下回る。ゼロコロナ政策の終焉で,小売部門の消費は活発化し、レストラン等の飲食店の売上げは同13.9%と急増した2/。いわゆるリベンジ消費である。その一方、鉱工業生産はまだ3.0%の伸びにとどまる。特に米国の制裁を受ける半導体部門の生産は減少したままである。

 

IMFは中国のGDPの伸びを今年が5.2%、来年が4.5%としているが、世界経済が減速する中で政府目標の5%が達成できるのかどうか分からない。とは言え、日本が1%そこそこの成長にとどまることに比べれば、旺盛な経済成長である。

 

 

1/ FRBの政策金利は4.755%にまで上がった。

2/ 朝日新聞デジタル版(2023418日)

 

 

 

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