先の見えない時代 (2012/9/29)
つくづく先の見えない時代である。
日本の内政を見れば、民主党代表選では野田総理が想定通り勝ちを収めたが、自民党の谷垣前総裁と約束した衆議院解散がどうなるのかは別としても、来年の選挙で民主党が第一党の座を守る可能性は相当低い。というよりも、確実に負けるだろう。
他方の自民党であるが、総裁選の地方票で過半を超えた石破氏ではあったが、国会議員だけで行う決選投票では、安倍氏に逆転負けをするという結果になった。正直なところ、そもそも地方票とは何であったのかとも思うが、党員でもない私が云々する話ではない。が、自民党に対する世間の見方が冷めているのは明らかだろう。一度辞めた総裁が返り咲きというのも、ぱっとしない話である。彼には、5年前に首相の座を放り出したという過去が、嫌が上でもついて回る。
さらに加えて、新聞報道によれば、阿倍新総裁は、当時原発推進、電力業界擁護の旗頭であった甘利明元経済産業相を含めて、かつての「お友達」を要職に就けるといった噂も出ており、この陣容で、思い切った変革が必要な今の日本に対応できるのだろうか、という思いに駆られる。
視点を変えて外交問題をみれば、尖閣諸島を巡る日中の争いは、当面、解決の糸口が見えない。両国は経済的に強く依存し合っており、日本にとっても、中国にとっても、経済への影響がこれからじわじわと出てくるだろう。
一方、中国とて日本と似たような内政状況を抱えている。この11月には、指導体制が胡錦濤から習近平へと世代交代するが、中国もこれまでのやり方で安定的な成長を持続できるわけではない。経済成長率の鈍化は明らかである。これまで成長を支えてきた安い賃金をテコにした輸出と海外からの投資をもとに外貨を稼ぐことは難しい。都市部と農村部の貧富の差の拡大、過剰な生産設備、重要な欧州市場の落ち込みと、構造的な問題を抱えている。
そもそも、共産党独裁という政治体制の下、民主化を否定しながら、資本主義の原則だけのいいとこ取りで、経済発展を追求しようとすることに無理がある。政治の建前と経済の実態との間の矛盾があまりにも大きすぎる。よく言われるように、尖閣問題で中国政府があれだけ頑なな態度を取っている背景には、政治交代というこの重要な時期に、国家主席の地位にある胡錦濤も、その主席の座を継ぐ習近平も、解決に向けた大胆な政治判断ができないことがある。そんな状況下で、国民の目に政府は弱腰と映れば、共産党体制そのものに対する不満がいつ吹き出すかするか分からない。これは、別に穿った見方ではない。時の政権が内政問題から国民の目をそらすために、外政問題を使うことはよくある話である。
こんな日中問題ではあるが、欧米の人々にとっては、それほど目を引くようなニュースにはなっていない。今私がいるビエンチャンでCNNにスイッチを入れれば、ニュースの大半は大統領選挙の話、リビアの米国大使館爆破のその後の影響、イラクの核問題である。米国にとって、なかなか進まない経済の回復、イスラム圏で起きている反米運動、核を巡るイラクとイスラエルの争いは、日本にとっての日中問題を遙かに超える頭の痛い話であり、全くと言ってよいほど先が読めない。
世界中どこに行っても、先の見えない時代になった。