ウクライナ——次は何が起きるのか? (2022/3/5)

 

 

日本のメディアは、現地に入って直接情報を取ることをしていない。欧米の二次情報を流すが、そこに踏み込んだ情報分析があるようには見えない。一方、英国のメディアは自ら現地で情報を取り、それを基に各専門家が鋭い分析を加える。

 

エコノミスト誌(The Economist)は、ウクライナの動向について編集者によるウェブを通した討論を購読者に提供している。なかなか中身のある議論が見られる。ロシア国内の現在の様子、とりわけ一般市民がこの戦争をどう思っているのか、日本では大したニュースがない。エコノミストの討論では、モスクワ駐在の編集者1/の意見が非常に興味深かった。

 

プーチンは軍政を敷き、市井は戒厳令(martial law)下にある2/2014年のクリミア侵攻の時と異なり、多くの市民は今回の戦争の成り行きを非常に怖がっているという。戒厳令下のモスクワでは、市民が手にする情報は政府が流す喧伝の偽情報だけで、他の情報源は閉ざされた。官製報道に従うしかなく、人々はますます不安におののくことになる。これまであった普通の生活は消え、市民は政府を恐れて噂話もできず、この戦争について何も話をしなくなった。

 

経済面では、西側が加えた制裁の影響が大きく出ている。市民は銀行のATMに殺到し、流通する紙幣の10%にあたる150億ルーブルの現金が一気に引き出された。西側資本の流通業は、ロシア国内での販売を取りやめた。その結果、モスクワのイケアの店頭に市民が殺到した(パニック買い)3/。流通が止まり、部品が入らなくなったことで、車の生産も停止している。流通、生産が止まることで、今後、雇用にも影響が出て来る。

 

この編集者によれば、ロシアの最終消費物資の4割は輸入品であり、急激なインフレが進み、それが市民のパニックを誘った。食料品以外の物価は4050%値上がりしたという4/

 

恐らくプーチンは、西側がこれほど強く纏まり、強硬な制裁を加えてくるとは思わなかったのだろう。ウクライナの反抗がこれほど強いとも思っていなかったようである5/。ことここに至れば、キエフを陥落させ、傀儡政権を立てたとしても誰も従わず、機能しないだろう。それを維持するためには、ロシア軍が長期に亘って駐留しなければならない。

 

プーチンの軍政の中では、戦術核や化学兵器の投入も議論に入っていると見られる。しかし、もし核や化学兵器を使えば、これまで中立を守っていた中国とインドも反プーチンに動くことになるだろう。

 

プーチンが始めた戦争は全く落とし所が見えなくなってしまった。「戦争を始めることは簡単だが、それを終わらせることは極めて難しい」という言葉がまさに当てはまる。

 

 

1/     彼はモスクワの生活が20年に亘るという。

2/     プーチンは、現状で戒厳令は敷いていないと発言している。

3/     この状況はAFPのウェブニュースで見られる。

4/     中央銀行はインフレ対策として基本貸出金利を20%に上げているので、この程度の物価上昇はあり得るだろう。

5/     軍事担当の編集者は、信頼できる情報に基づけば、当初攻撃に入ったロシアのヘリコプターが落とされ、60両の戦車が対戦車砲で撃破されたと見ている。ロシア兵の戦死者数も発表された500名程度の2倍はあるのではないかとも言う。

 

 

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