ウクライナの反転攻撃の現状 (2023/8/23)
ウクライナの反転攻勢が始まって2ヶ月半が経ったが、その歩みは遅々としている。ウクライナ軍が前進した距離は僅か数百メートルにすぎない。ロシア軍の防御は硬く、ウクライナ軍はなかなか前に進めていない。
現状は、ウクライナ軍に反撃宣言以前ほどの勢いがなくなっている。
戦況が膠着状態にあるなか、ロシアについて言えば、マスメディアで取り上げられているように新たな兵隊募集で相当苦心している。刑務所から赦免を条件に雇い兵を確保したり、部分動員をかけたりした。さらにプーチンは、徴兵対象者が国外に脱出する前に召集令状が即刻届くように、令状のデジタル化を承認したというニュースもでてきた。正直、ロシアの青年にとってウクライナで戦うことの大義がない。
しかし、ウクライナ軍でも新たな兵隊の募集が順調というわけでもなさそうだ。侵略が始まった当初は志願兵が集まったが、ロシアの侵略から一年半が経ち、反攻も思うように進んでいないことから、現状はほとんどの募集兵は指名されてしまったので、イヤイヤながら戦場に赴くというのが現状という1/。
かと言って、よい風がロシアに吹き始めたわけではない。
今月20日、オランダとデンマークはウクライナが求めているF16戦闘機の供与を決定した。ただし、戦闘機が今すぐ届く訳ではない。中古のF16を整備仕直さねばならず、ウクライナ空軍の戦力となるのは年明けになる。また、スウェーデンとウクライナは、スウェーデン製の戦闘機「グリペン」供与に関する協議を開始したと明らかにした2/。
一方、ロシアでは、8月14日にルーブルが今年最安値を記録し、経済は落ち込んできている。言うまでもなく、軍事費を含めて政府の財政支出は苦しくなる。そもそもロシアの経済規模(名目GDP)は韓国と同程度、世界で第12位に過ぎない。西側が支援するウクライナでの戦争を何年にもわたって維持するだけの経済基盤はない。
プーチンは特別軍事作戦と称し、短期間でキエフを落とし、ゼレンスキー政権を転覆させるつもりだったが、今や完全に泥沼に足を突っ込んでしまった。
1/ The Economist, “War Room” (2023/8/21)
2/ ロイター通信 (2023/8/20)