ウクライナ戦争の行方 (2022/12/23)
2月に始まったロシアのウクライナ侵略は、既に10ヵ月が経過した。そんな中、昨日、ウクライナのゼレンスキー大統領がホワイトハウスでバイデン大統領と会談し、その後議会で演説した。この電撃訪米は直前まで厳しい箝口令が引かれていたようで、いずれのメディアもこの出来事をスクープすることはなかった。世界の人々がこの会談を知ったのは、確か前日だったと思う。
米国はこれまでに650億ドル(約8兆6000億円)の支援/1を行ってきた。今回の会談でバイデン大統領は18億5000万ドル(2100億円)の支援を約束し、さらに議会には450億ドル(5兆9900億円)の緊急支援法案が提出されている/2。
一方、共和党はウクライナ支援に対して熱が冷めつつあることも事実である。3月時点で8割の共和党支持者が支援に賛成していたが、今では半分を超える程度にまで下がってきている。つまり共和党のウクライナ支援を続けようという意見は弱まりつつある。
今回の電撃会談はバイデン政権の意向で進められたと言われる。これまで余りパットした政治成果を示すことが出来なかった政権にとって、ゼレンスキーの議会演説はウクライナ問題への関心が薄れつつある共和党議員を牽制するという点で、大きな意味合いを持つものとなった。
では、ロシアはこの戦争をどのように決着させようと考えているのだろうか。結論から言えば全く分からない。なにせ、モスクワの政治は我々にとって全くのブラックボックスである。ロシア国民にとってもそれは同じだろう。唯一、ロシアにとってゼレンスキーとバイデンの電撃会談が大きなショックであった事は間違い無かろう。
反撃するウクライナ軍に押され、この厳寒の中でロシア軍は動けなくなっている。年明けに向けて、戦況の見通しについていろいろな憶測が出ている。ロシアはこの冬の間に新たに動員した兵隊を訓練し、年明け2月かあるいは春先に攻撃を仕掛ける、あるいは再度キーウへの進撃を企てるといった話がある。その一方で、既に相当数の弾薬を使い果たし、大規模な兵力を動かすことは出来なくなっているという話もある。
戦力の点でロシアが相当困っていることは間違いなかろう。様々なニュースが溢れる中で、どれほど正確な数字かは分からないが、ロシア軍の死者は9万人ともとも伝えられ3/、また戦車の半数を失ったとも言われる。キーウへの進撃を念頭に、プーチンはベラルーシに参戦を求めたようであるが、ルカシェンコ大統領はそれに答えていない。今のベラルーシの国内情勢と兵力を見れば、それは出来ない相談なのだろう。
プーチンがこのまま戦争を続けたとしても、ゼレンスキー政権を倒し、傀儡政府を作るという当初の目論見は達成できないだろう。西側からの投資の多くは損切りしてロシアから撤退してしまった。投資先としての信頼を完全に失った今、長期にわたってロシア経済は苦しむことになる。
1/ BBC News (2022.12.22), “Zelensky makes his pitch - will US
sceptics buy it?”
2/ BBC News (2022.12.23), “Ukraine war: Zelensky's visit shows
neither Ukraine nor US want peace, Russia says”
3/ The Moscow Times (2022.11.25), “Death Toll for Russian Soldiers in
Ukraine at Least 9,300 – BBC”