米中対立
(2023/8/11)
バイデン大統領は今月9日、米国から中国へのハイテク産業の投資について、安全保障の観点から新しい規制を導入すると発表した。これは量子コンピュータや最新半導体が対象に含まれる。
これまでの米中対立の流れの中で、バイデン政権は中国製品や資源への依存度を下げようとしてきた。この流れはバイデン政権になって出てきたのものではない。トランプ前政権下で、特定の中国製品に対して課徴金を掛けており、さらに中国に対する規制を強めたものである。
米国は一連の動きをデカップリング(Decoupling)ではなく、中国に依存することのデリスキング(de-risking)、すなわちリスク軽減と呼んでいる。
ただし、このような対中政策が実際にどの程度機能するのかは分からない。トランプ政権が中国製品に対して課徴金を掛けたことで、見かけ上、輸入品に占める中国のシェアは下がったが、その分、他国からの輸入が増えている。もちろん、そのような他国からの輸入に中国企業も関連している。
中国企業は、これまでのように中国国内から輸出するという単純な貿易構造を維持することが難しくなりつつあることはわかっており、東南アジアのみならず北米や欧州への直接投資を進めている。
これは必ずしも中国製品に対する規制ゆえの結果ではない。東南アジア、例えばベトナムで言えば中国の人件費が上昇する中で、より安い労働力を求めた結果である。一方、北米や欧州で言えば、市場と供給構造を一体化させる、グローバル戦略の結果でもある。
イデオロギーゆえの米中対立はますます深刻化するであろうが、その一方で、中国企業の活動を封じ込めることは、簡単ではないし、止めることも難しかろう。
企業も製品もますます多国籍化し、国籍を問うこと、ましてや生産国を問うことの意味がなくなっていく。