トランポノミクス
(2024/1/16)
トランプの政策がどのようになるかは予測し難い。しかし、彼が選挙中からキャッチフレーズのように口にしていた言葉がMAGA1/、つまり「米国を再び偉大に」であり、そのために貿易、規制、そして移民問題と、民主党政権下での政策を大きく変更することは既定路線である。
トランプの一番の不満が貿易である。いみじくも、彼は選挙中に「辞書にある最も美しい言葉は関税である」と言った。米国に対する最大の黒字国は中国、次にEU(全体)、そしてメキシコと続く。米国を騙して来た中国に対して60%の関税を、メキシコ製品に対しては25%、自動車にはもっと高い関税を掛けてやると脅しを掛けている。その他の国に対しても10〜20%の関税を掛けると言う。日本は7番目の黒字国なので、当然その対象になる。
米国は世界最大の経済大国であり、最大の国際通貨(つまり米ドル)の保有国である。関税が上がれば、貿易のみならず資本の移動、そして為替レートに大きな影響を及ぼす。
もしトランプが言葉どおりに関税を上げれば、中国のGDP2/は1%、欧州は0.5%落ち込むとの推計がある3/。メキシコは壊滅的な影響を受ける。何せGDPの1/4超が米国への輸出に依存しているのだから。
企業の対応はどうなるのだろう。関税を避けるためには、対米輸出から米国内への直接投資に進まざるをえない。一方、中国に投資していた企業は生産を中国から他の国に移動する。
貿易構造の変化と同様に資金の流れも変わる。減税と規制緩和が進むことから、企業の業績が上向くとの思惑で株価は上がり、この11月に入って最高値を記録している。投資が米国に向かえば、当然ドルは強くなる(ドル高が既に起きている)。関税の引き上げと移民規制に伴う労働力の逼迫により、インフレ圧力は高まる4/。そうなればFRB5/は金利を引き上げざるを得ないだろう。それはドル高が続くことを意味する。
はたして、トランプが選挙で言ったとおりに関税を上げるかどうかはわからない。取引がお好きな人ゆえに、関税で脅かして譲歩を求めることは十分考えられる。予想できないことがトランプの本質である。
何れにせよ、米国第一のトランポノミクスで、日本やEUが難しい立場に追い込まれる事は間違いない。
1/
Make
America Great Again
2/
Gross
Domestic Product,国内総生産
3/
The
Economist, Nov 14th 2024
4/
関税を負担するのは輸出企業でなく輸入業者であり、最終的に消費者に転嫁される。
5/
Federal
Reserve Board,連邦準備制度理事会