トランプ大統領 対中国貿易戦争 (2017/2/26)
トランプ大統領が抱える次の問題は、中国に対する貿易赤字である。選挙中に叫んでいた中国による為替操作の非難と中国からの輸入品に対する45%の関税は、その後余り口には出なくなったようである。もっとも、最近でも支持者に対する演説では、中国とメキシコからの輸入が産業の廃退と失業を招いたと、依然叫んではいるが。
ではトランプ大統領は、具体的にどうしようとしているのだろうか。
45%の関税は世界のモノのサプライチェーンを壊し、物価の上昇を招き、国内の消費者の利益を損ねる。多分彼は、その様な手段は執らないだろう。ホワイトハウスは今のところ、中国を名指しすることを避けて、あらゆる手段を使って貿易不均衡を解決すると言っている。
米国はオバマ政権下でも、米国通商代表部は鉄鋼製品のダンピングや希土類金属の輸出枠の設定で中国からの輸入品に対して関税を掛けようとしたので、これが初めてのケースではない。ただし、関税を掛ければ、当然、中国は報復する。米国は、かつて中国製タイヤの輸入急増に対して関税を掛けた。これに対して中国は米国からの鶏肉の輸入を南米に切り替えた。
もし、トランプ大統領が中国製品に関税を掛ければ、米国からの大豆や航空機の輸入を他国に切り替えるだろう。どちらも米国にとって重要な輸出産業である。米国の農家が中国市場を失えば、価格の下落を招き、農家にとっては大打撃となる。航空機もボーイングが市場を失い、代わってエアーバスがそれを手にすることになる。
中国が貿易の国際ルールを守っていないことは事実であるが、これを世界貿易機関(WTO)に持ち込んでも、解決には相当の時間が掛かる。結局、政治的に問題を解決しようとすれば、中国と貿易協定を結び、そのルールを彼らに守らせることだろう。
実は、この問題は日本とも関係してくる。
既にトランプ大統領は、環太平洋連携協定(TPP)から永久に離脱するという大統領令に署名している。彼は米国がTPPで譲歩しすぎたと考えている。が、日本はこれでこれまでの苦労がご破算になったと思う必要はなかろう。日米貿易で言えば、少なくとも一度は米国が納得したTPPをベースにさらに踏み込んで行けば良い。要は中国に国際ルールを守らせるための枠組みを作ることである。これは日本にとっても良い話である。