トランプ大統領の通商政策 (2018/6/17)

 

 

カナダでのG7首脳会合のコミュニケが発表された途端、トランプ大統領はそんなものは支持しないとツイートした。そして、中国に対する関税強化の交渉が概ね妥協点に達したと思いきや、この16日にいきなり総額500億ドルの関税措置を決定した。もちろん中国も黙っているはずはなく、同時期、同額の報復関税措置で対抗すると発表した。

 

今回の500億ドルの関税措置は建て前として中国の知的財産の侵害であるが、根っ子にあるのは対中国貿易の大幅な赤字問題であり、鉄鋼とアルミ製品への課税措置がその発端であった。

 

そもそもトランプ大統領に通商政策があるのかと言えば、相当怪しい。

 

彼にとって、貿易とはある国がある製品を全て自国で作って、それを他の国に売るという発想しかない。それは1950年代、1960年代の話である。工業製品を分解してみればわかるように、製品を構成する部品は様々な国から供給される。それらを組み立てたモジュールはさらに国の間を行ったり来たりして最終製品に組み込まれる。

 

すでにサプライチェーンは多国間にわたっており、どこの国製という表示に大した意味はない。単に、最終的に組立を行った国を示しているに過ぎない。この点で工業製品に対する関税措置は自国にも跳ね返る(関税で輸入を抑えれば、その影響は多国間に及ぶ。もちろん自国の輸出にも影響が出る)。

 

トランプ大統領の目的は明確である。彼が大統領選で口にした公約の実行と、当面の中間選挙、そして二年半後の大統領選で支持者をつなぎ止めることである。

 

しかし、貿易赤字を近視眼的に捉え、関税措置を手段として二国間取引で問題を解決しようとした事は決して狙いどおりの結果を生み出さない。関税措置では、中国だけでなくカナダ、メキシコ、EU、そして日本とも事を構えた。米国一国でその他全ての国を相手に喧嘩を売ってしまった。

 

今や米国の不公正な貿易をその他の国が正し、公平な国際貿易を守ろうという構図が生み出された。不公正な貿易の代名詞であったはずの中国の習近平国家主席に、「我々は各国に共同行動を取ることを呼びかけ、こうした時代錯誤の行為を断固として制止し、人類の共同利益を守る(朝日新聞2018615日)」と言わしめた。まさにビッグジョークである。

 

喧嘩を売られた相手国は緻密な報復関税措置を打ち出し、共和党が地盤とする州、そしてスイングステート(共和党と民主党が拮抗し、シーソーゲームとなっている州)を狙い撃ちにする。重要な輸出産品である大豆、豚肉(そもそも米国人はそれほど豚を食べない)、バーボンウイスキー、ハーシーズのチョコレート、米国の誇りとも言えるリーバイスのジーンズ、ハーレーデビッドソンのバイクがその筆頭となる。とりわけ農業州に与える影響は大きい。

 

おそらく今年の中間選挙では、全議席が改選となる下院では民主党が勝つだろうし、三分の一が改選される上院でも共和党と民主党の議席差が縮まるだろう。もしそうなれば、トランプ政権は半分死に体となる。

 

 

 

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