トランプ大統領入国禁止令 (2017/2/8)
アメリカ入国を禁止した大統領令を巡って、今日、その差し止めを求めたワシントン州などと、その差し止めを不服とする政権側との口頭弁論がサンフランシスコの連邦高等裁判所で行われた。
さすがアメリカと思うのは、両者の弁論がそのままウェブで流され、国民は双方の意見を直接耳に出来ることである。まさに公正性の担保と情報公開の徹底は、日本とは民主主義の歴史が違うことを感じさせる。
ところで大統領の入国禁止令であるが、対象国はシリア、イラク、イラン、リビア、ソマリア、スーダンそしてイエメンの7カ国に限られる。
では米国で起きたテロの犯人像を見てみよう。まず2001年の9.11テロの犯人は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプトそしてレバノン出身者である。それ以降のテロで関与した回教徒は米国籍か市民権を持っている。つまり自国内の人物である。記憶に新しいボストンマラソンでの爆破事件の犯人はチェチェンからの移民であり、7カ国とは無関係である。
少なくともマスメディアで知るテロ事件で、入国禁止となった7カ国からの入国者や移民が関与した例はない。一方、1975年以降の統計で、殺人に関わった移民の出身国を見ると8割超がサウジアラビアとエジプトである。(The Economist 2017.2.4)
一方、トランプ大統領はサウジアラビアとエジプトには好意的な態度を示している(言うまでもなく、入国禁止の対象国ではない)。大統領は、入国禁止令を出す一方で、サウジアラビアのサルマン王に電話を入れ、連携強化を語った。また、トランプ氏は、以前、エジプトのアブデル・ファタ・シシ大統領のことを「素晴らしい奴」と讃えたことがある。
つまるところ、トランプ大統領が言うテロを起こす回教国とは、彼が気に入らない国にすぎず、たとえ米国内での殺人犯が多くあろうとも、親米のアラブ諸国は別というわけである。
さてさて、前述のサンフランシスコの連邦高等裁判所の判断は今週末までには出ると言われるが、どんな答えが出るか楽しみである。