トランプ大統領の外交政策 (2018/6/10)

 

 

お騒がせ続きのトランプ外交である。この6月には大きな外交の場があるが、どれだけの成果があるのか大いに疑問である。一つはカナダで開かれたG7会合、もう一つは明後日シンガポールで開かれる米朝首脳会談である。

 

G7会合を前にして、トランプ大統領はメンバー国である日本、カナダ、EUに対して鉄鋼とアルミ製品に対する25%の関税強化を決め、さらにG7へのロシアの復帰を口にした。要はG7会合に際して、まず同盟国である他のG6の横っ面をひっぱたいた訳である。

 

当然、G7会合がすんなりと進むはずはない。今朝の朝日新聞は、鉄鋼・アルミ製品への高関税措置を課したトランプ大統領とそれに抗議する首脳達の間で激しい議論が交わされたと伝えている。最終的にG7宣言文は出されるようであるが、こと世界貿易に関しては中身のない上辺を飾った文言で締め括るのだろう。

 

次に明後日の米朝首脳会談であるが、大きな成果が期待できるとは思わない。こと北朝鮮の完全な非核化がこの場ですんなり決まるとはとても思えない。

 

トランプ大統領の外交政策(いや、彼の政治能力そのものと言ってよい)には致命的な欠陥がある。彼に政治家として手腕を見せようという意思があるとは思えない、単に自己陶酔的に物事にあたっているだけで、深く物事を考えることがない。それ故に、すべての行動が衝動的であり、それがどのような結果をもたらすのか深く考えない。その行動はまさにニューヨークの不動産屋の取引そのものである。

 

この1年半の間に彼が実行したことといえば、オバマ大統領の実績を否定することに尽きる。

 

パリ協定(気候変動枠組条約締結会議)からの離脱、TPPからの離脱、イスラエル大使館のテルアビブからエルサレムへの移転、メキシコからの不法移民二世の送還など、まずはトランプ支持者達を喜ばせるための「大統領選でのお約束」の実行でしかなかった。それによって米国が抱えることになる新たな問題の発生、これまで世界から自由主義のリーダーとして見られてきた米国に対する信頼の毀損など、彼の眼中には全くない。

 

彼の行動が米国にとって長期的な利益をもたらすことはない。

 

中国との間で抱える膨大な貿易赤字問題では、鉄鋼・アルミ製品の関税強化の実施を取りやめ、中国による米国からの輸入を増やすことで妥協するようである。また、中国との取引の過程で、イラン制裁に違反したZTEに対して一旦決定した半導体販売の禁止措置を停止した。

 

対中国貿易が抱える最も重要な問題は、中国企業による知的所有権の侵害であり、政府資金を使った自国企業に対する優遇策(投資と技術開発)、そして外国企業に対する差別的な取り扱いである。これら根本的な問題はまったく解決されていないし、米国の経常赤字の抜本的な解決もまったく望めない。

 

さらにトランプ大統領の行動が、米国が世界貿易のルールであるWTOの枠組みを壊しつつあることを世界に確信させ、他方で、中国が言い出した(中国は)世界貿易の信奉者であるという主張にまがいなりにも正当性を持たせることになりつつある。

 

これから進む米朝首脳会談でも、中途半端な目先の取引で妥協することは問題をますます複雑にする。北朝鮮が核を完全に放棄することはないだろう。あり得るシナリオは、トランプ大統領との「取引」で大陸間弾道弾は放棄するが、短・中距離弾道弾は対象としないことである。日本だけでなく、東アジアにとって最悪の結果を招く。

 

 

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