トランプを巡る裁判 (2024/5/5

 

 

あと半年後に控える大統領選挙でトランプが勝つのか、はたまたバイデンが勝つのか、全く分からない。ただし、トランプが抱えている四つの刑事裁判のうち一つが始まり、残りの裁判も大統領選の前に始まるだろう。もし有罪の判決が下れば、史上初めて、有罪判決を受けた人物が大統領選を戦うことになる。それどころか、大統領になったら、自らに恩赦を与えるだろう。

 

1.ジョージア州の選挙妨害

 

裁判の管轄はジョージア州のフルトン。日程は未定であるが、検察は20231117日に起訴。202485日に裁判の開始を探る。

 

2020年の大統領選で、ジョージア州の選挙結果を覆すために行った犯罪の主犯としてトランプが起訴された。トランプとともに犯罪を犯した19名が訴追されている。犯罪行為として幾つかが挙げられている。

      何名かの被告(嘘の選挙人)は議会にジョージア州でトランプが勝ったという嘘の書類を提出した。

      また他の被告は州にバイデンの勝利を覆すように訴えた。

      さらにある被告は選挙職員に嫌がらせを行い、選挙のデータを盗んだ。

      トランプは一連の犯罪行動の動機づけを行った。

      トランプは20211月にジョージアの州務長官ブラッド・ラフェンスペルガーに「11780票」を探せと電話した。

 

ちなみに被告のうち4名は司法取引に応じて、検察に協力する事に同意した。

 

2.選挙妨害

 

管轄は連邦(ワシントンDC)。裁判は34日に開始されるはずであったが、遅れている。

 

起訴内容は、トランプがバイデンを支持する選挙人団の議会認定手続を遅らせ、かつ国民の権利を侵害し投票数を数えないように企てた。また、アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ニューメキシコ、ペンシルバニア、ウィスコンシンの「偽りの選挙人」を影で糸を引き、司法長官と副大統領のマイク・ペンスにそのための計画作成を依頼した。そして202115日の議会乱入事件を企て、選挙結果の承認を遅らせようと企てた。

 

この件でトランプの弁護士は、当時トランプは大統領の職責にあり、免責されると主張した。またトランプは、大統領は刑事事件であっても免責されるとも言ったが、検察は選挙結果を覆すことは大統領の職責からはほど遠いと反論した。ワシントンDCの裁判所は26日にトランプのこの主張を却下した。トランプは、この裁判を留め置くために最高裁に判決を一時停止するように求めた。

 

3.業務記録の改竄

 

管轄はニューヨーク州ニューヨーク市。415日に裁判が行われた。

 

トランプはポルノ女優ストーミー・ダニエルズに支払った13万ドルを隠蔽するために業務記録を改竄したという34の罪で起訴された。2016年の大統領選の直前に、彼女はトランプと寝たことを公表すると脅かした。トランプの弁護士マイケル・コーエンは口止めの金を支払った。コーエンはこの支払に関して選挙資金違反で有罪を受け、罪状を認めている。トランプはこの金はコーエンの法律サービスの対価であると述べることで、コーエンへの支払を隠蔽したとして起訴された。

 

この裁判で、裁判長は証言する人たちや陪審員等の関係者ついて口外しないよう箝口令を敷いた。しかし、トランプがソシアルメディアで公にそれを言及したことで、裁判所は9件の違反があったとして9000ドル(135万円)の罰金を科し、投稿を削除するように命じた。もし、今後違反が続けば収監することもあり得ると警告した。

 

裁判が開かれる間トランプは出頭しなければならないが、陪審員の評決が出るまでに1ヵ月以上掛かるとみられる。

 

4.機密書類の不正な取扱

 

管轄は連邦(フロリダ)。裁判は52日に始まる予定であるが、遅れることは確実。

 

2023613日、トランプはホワイトハウスを去った後、機密書類を不正に取り扱ったとして34の罪でフロリダの裁判所に召喚された。ほとんどの罪状は1917年スパイ法に基づく(許可なく政府機密を持ち出した)。トランプは米国の核兵器プログラムと他国の軍事能力に関する記録を所持していたと言われる。彼は捜査を邪魔したことでも起訴されている。さらに2023727日、検察は彼が証拠隠滅を図ったとして新たな罪状を加えた。

 

トランプは、機密書類を所持しその内容を漏らすことが罪であることを知っていたとされる。また、機密書類は安全が保障されない場所に隠匿されていた。起訴状では、トランプのフロリダにある別荘マー・ア・ラゴの様々な場所(ダンスルーム、風呂場、倉庫などプールの中庭から一般人がそこに入りうる場所)に箱積みされていたとしている。

 

5.その他民事訴訟

 

トランプは刑事訴訟以外に幾つかの民事訴訟を抱えている。

 

20231226日、ニューヨーク・マンハッタンの連邦地裁で、陪審員は1990年代にトランプがニューヨークのデパートの試着室でコラムニスト、E・ジーン・キャロルに性的暴行を加え、その後も彼女を中傷したことに責任があると評決した。そして2024126日、地裁の陪審員は8330万ドル(125億円1/)の損害賠償を支払うように評決した。

 

ニューヨーク州は、トランプと二人の息子が運営するトランプ・オーガナイゼーションが2011年から2021年に亘って純資産を偽ったという金融詐欺事件で起訴した。この詐欺の目的は、有利な融資を得ることで納税額を少なくするためであったとされる。2024217日、ニューヨーク地裁はトランプ氏が向こう3年間、ニューヨーク州内で企業経営者になったり、州内の金融機関から融資を得ることを禁止し、かつ違法に取得した利益36400万ドル(546億円1/)の返還を命じた。

 

トランプは、控訴するために保証金が必要となる。当初、その額は45400万ドル(681億円)であったが、トランプはそれが高額すぎる2/と減額を求め、525日、地裁は17500万ドル(263億円)に減額した。

 

 

 

 

1/     US$=¥150にて換算。

2/     トランプは供託金支払のために保険会社と交渉したが、いずれも不動産による担保を受け入れず、全額現金等による担保を要求した。しかし、トランプは十分な現金を持っていなかった。

 

 

 

 

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