今ひとつ盛り上がりの欠ける東京オリンピック (2021/7/26)
直前までゴタゴタが続いた東京大会ではあるが、なんとか開催に辿り着いた。
無観客で実施した開催式の印象は、今ひとつ盛り上がりに欠けるパットしないものになったと言うのが正直なところであろう。そのあたりの評価は、海外の代表的なメディアの捉え方でも概ね同じである。
開催式では、コロナで亡くなられた方々、さらには1972年ミュンヘン・オリンピックのテロで殺害されたイスラエル選手に対する黙禱という見識を示すとともに、大坂なおみが聖火を灯し、八村塁が騎手を務めることで、しばしば単一民族を強調してきた日本人にも多様性のあることを僅かながらもアピールすることで、新しいオリンピックの姿を見せようとした。
半面、現実を見ると暗い気持ちにならざるを得ない。スローガンとして掲げた福島の復興とコロナウイルスへの勝利は、実態からはほど遠い。ここ数日間の東京都の新規感染者数は千人を優に超え、二千人に届かんという日もあった。そして、老人を除けばワクチン接種は遅々として進んでいない。
オリンピック招致から開催に至るまでのスキャンダルには、目に余るモノがあった。
国際オリンピック委員会の委員に対する賄賂疑惑でフランス当局が捜査を開始したことで日本オリンピック委員会の竹田恒和会長が辞任。国立競技場の建設で採用が決まっていたザハハディッドの設計は、建設費のコスト超過で廃案となり、隈研吾の設計に変更された。追い打ちをかけるように、一旦決まった佐野研二郎のオリンピック・エンブレムは盗用疑惑で使用中止となり、急遽「組市松紋」へと変更された。
スキャンダルはまだまだ続いた。今年2月、組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視発言で辞任。3月には、クリエイティヴディレクターだった佐々木宏氏が同じく女性蔑視発言で辞任。7月に入り、楽曲の作曲を担当することになっていた音楽家の小山田圭吾氏が過去のいじめ問題が切っ掛けで辞任。そして開催直前には、開閉会式ショーディレクターの小林賢太郎氏がホロコーストを揶揄したことで解任となった。
まさにコロナ禍で開催が一年遅れたことにより、日本社会に根強く残る性差別、そして上部組織にはびこる老害の実態がさらけ出された。
確かに競技が始まり、この5年間を耐え続けてきた選手がメダルを取ったというニュースを聞けば、よくやったと声援を贈るが、オリンピックの裏に潜むなにやら薄汚いものも同時に脳裏をかすめる。
そんなわけで、今回の東京オリンピックが盛り上がりに欠けるのは、否定しがたい事実である。