The Room Where it Happened (それが起きた部屋)” John Bolton, June 23, 2020, Simon & Schuster

 

 

翻訳版が107日に朝日新聞社から出版される。Kindleの英語版は、時差の関係で日本での発刊が一番早かった。590頁の大作なので、全てを読み通すのは少々力仕事である。

 

トランプ大統領の行動についてはマスコミで色々と報じられて来たので、新たな発見があるわけではないが、トランプが過去3年半の間に行った対外交渉と彼の好きなディールでどのような行動を取ったのか、その詳細を知るには面白い内容が目白押しである。

 

著者のボルトンはトランプを相当こき下ろしている。政治家としてのビジョンのなさ、不動産取引と同じような目先の損得勘定だけでの判断、自分の考えに固執し、他人の意見を受け入れない身勝手かつ場当たり的な振る舞いがトランプの全てを物語る。ホワイトハウスの内側にいた側近中の側近がそんな見解を持っていたのだ、と言うことを分からせる。

 

日本の人にとって関心がある話題は、北朝鮮問題、つまりトランプと金正恩との交渉の内幕であろう。

 

トランプの頭の中にある最重要事項は、北朝鮮の核および大陸間弾道弾の放棄である。逆説的であるが、短・中距離ミサイルは交渉の切り札として取りあえず問題にしない。一方、韓国の文在寅の頭にあるものは南北統一であり、北の核放棄はその後考えれば良い問題である。

 

一方、当時の安倍首相にとっては、核と短・中距離ミサイルは日本の安全保障にとって最大の課題である。また、内政的には拉致問題の解決も重要課題である。問題は、北朝鮮にとって日本は取りあえずの交渉相手では無い点である。

 

北朝鮮問題以外に、欧州との交渉やイラン問題が章立てで書かれている。トランプの行動と危うさを知る上で興味深い逸話が並ぶ。

 

あと数日もすれば翻訳版が出るが、ちょっと心配なことは、11月の大統領選を控えてトランプが劣勢にあること、昨日彼とメラニア夫人がコロナウイルスに感染したと報じられ、今日は彼の症状が悪化したと伝えられたことである。このまま、トランプが大統領選挙から脱落してしまうと、この本に対する世間の関心は一気に萎んでしまうかも知れない。

 

 

 

 

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