『「低度」外国人材——移民焼き畑国家、日本』 安藤峰俊 20213 KADOKAWA

 

 

「低度」と言っても、侮蔑しているわけではない。政府が提唱する「高度外国人材」に対比した、強烈な皮肉である。

 

高度外国人材は日本の経済発展に貢献する高度な能力や資質を持つ者を指し、出入国管理上の優遇措置が与えられる。

 

一方、40万人を超える技能研修生の実態が、安い労働者確保のための詭弁であることは周知の事実である。それに加えて、35万人ほどに及ぶ留学生のうち、かなりの多くが就労目的であることもお馴染みの話である。その技能実習生、偽装留学生、不法滞在者に対するメディアの取り上げ方はステレオタイプのものが多く、著者が言うように、「かわいそう」か「叩き出せ」の図式に落とされる。

 

北関東で起きた豚、鶏、さらには果実の盗難事件は、当初は違法滞在しているベトナム人の組織的な犯罪と思われていた。しかし、捕らえてみればどうもそうではなかった。この手のコソ泥は今までもあったが、農家は気が付いていなかった。ところがこのコロナ禍で働き場所を失い、帰国することすらできずに不法滞在状態に追い込まれた多数のベトナム人が、あちらこちらでやり始めたことから大騒ぎになったというのが実態のようである。

 

日本政府の技能研修制の制度作りも行き当たりばったりであるが、研修生も行き当たりばったりで来日している。今回のようにひとたび疫病蔓延が起きて社会環境が急激に変化すると、ほとんどすべてが破綻する。

 

かつて大半を占めていた中国人は減り、今や技能研修生の多くをベトナム人が占める。その理由は簡単である。中国経済が成長し、何も日本行って劣悪な環境に甘んじ、低賃金で働く必要はなくなったからである。カネを稼ぐことが目的ならば、わざわざ日本に行かなくとも、中国でその機会は十分ある。

 

ベトナム人研修生も、母国の送り出し機関の甘言に乗り、日本に行けば金が稼げると信じ、多額の借金をして来日した。そもそも彼らの多くは、貧しい地方で育ち、教育も受けていないので、物事を深く考えて身の処し方を決めることができない人達である。母国でピンハネされ、日本でピンハネされ、そして手にする金が僅かなものであったという現実を知ることになる。

 

おそらく後10年もすればベトナムの生活水準も上がり、日本で安くこき使われるより、国で働いた方がカネを稼ぐチャンスに恵まれることになるのだろう。そうなると、ベトナム人が去り、さらに貧しい国から来る技能研修生が彼らに置き換わっていく。日本が移民焼き畑国家たるゆえんである。

 

 

 

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