税のばらまきが始まった。 (2008.10.30)
世界的な金融危機により経済の落ち込みがますます深刻化し、円高と株の値下がりが毎日の新聞の見出しを飾り続けている。
麻生内閣は、この経済の落ち込みを支えるために、総額2兆円という大きな規模で給付金方式の減税を行うことを決めた。加えて昨日は、金子国交相が土日祝日の乗用車の高速料金を距離無制限で1000円にするという話まで出してきた。その財源は財政投融資特別会計の余剰金5000億円という。
これでは、不況対策に名を借りた、衆議院解散前の選挙対策ではないか。
前者の給付金について言えば、その額は一人あたり1万5000円になるというが、これがどの程度の経済効果を生むか大いに疑問である。確かに、1万5000円也のクーポン券を手にすれば、何かを買うことになるだろう。しかし、それは一回きりのことであり、消費が継続するわけではない。給付金とは逆の話となるが、その昔、消費税を3%から5%に上げる直前に駆け込み需要が発生し、小売業の売り上げが急増したものの、5%になった途端、売り上げが激減してしまったことを思い出す。収入が伸びないなか、消費者は支出に敏感になっており、一時的に金が入ったからといって、継続的に消費行動を変えるわけではない。こんな形の減税では、景気対策にはなり得ない。
土日祝日の高速道路料金の値下げに至っては、なにをか言わんや、である。確かに、日本の高速料金の高さには私も腹を立てている。道路族の利権確保のための野放図な道路建設にとてつもない金を投入し、それを利用者につけ回した結果である。料金制度の話はさておいて、今の不況下で高速料金と燃料代で最も困っているのは、輸送業者である。経済対策を言うならば、このような輸送に係わる構造的な問題(特別財源の一般会計化、高速道路建設の妥当性など)から考えなければ、「対策」にはなりえない。
国交相が言うことは、「皆さん、土日には車を出して、ガソリンをばらまいて、高速道路を走り回りましょう」と言っているに過ぎない。高速道路建設の財源となっている揮発油税の暫定税率延長を国会で強行に通したとき、当時の福田首相が言った言葉を思い出してもらいたい。確か、「洞爺湖サミットを控え、日本だけがガソリン価格を低く抑えて浪費し、CO2を出すのでは、国際的に筋が通らない。車の使用を抑制するためにガソリン価格は高くて当然である」といった趣旨の発言であったと記憶している。
ことほど左様に、政府の発言はその時々のご都合主義になっている。
麻生政府が考えるこのような景気対策では、結局、財政赤字の傷口拡大にしかならない。最終的に、赤字国債の発行か、その後の税制の見直し(消費税値上げ)で国民にツケが回ることは確実である。