台湾積体電路製造(TSMC)、破格の初任給
(2022/6/9)
一昨日の日本経済新聞に標記の見出し記事があった。TSMCが熊本に進出し、2024年の工場稼働に向けて1200名の人を応募している。来年の初任給は学卒が28万円。修士修了が32万円、博士は36万円という。これは日本の今年の平均初任給の約4割り増しに相当し、破格の好待遇である。
あおりを食ったのは国内の同業他社で、人材を確保するどころか、自分のところから流出の懸念があるという声が聞こえる。
ところで、日本の給与水準に目を向ければ20年以上に亘って給与の伸びは停滞した。これに対して、世の中では給与を上げろという声が聞かれる。挙げ句の果ては、これは政府の経済政策が悪いからだ、富の再配分だ、大企業から税金を取り立てろ、それを昇給に廻せ、と言い出す野党もいる。
そんなことで景気がよくなるならば、誰も苦労はしない。
生産性が上がらないところで、給与を上げればどうなるかは、韓国の文在寅政権が行った大幅な最低賃金の引き上げで、何が起きたかを見れば明らかだろう。文政権は経済運営の効率を高めるのではなく、労働者の取り分を増やすことに力を入れた。その結果、中小企業を中心に企業の体力が落ち、雇用が減少した。とりわけ、若年層の失業率が高止まりした。
給与とは、働いて生み出した付加価値への対価である。TSMCが高い給与を出すことが出来るのは、高い生産性を持ち、高い付加価値を生み出しているからに他ならない。当然のように、TSMCもそれに見合った能力のある優れた人材を求める。誰でもよいというわけではない。
日本のGDPが長きにわたって伸びなかったこと、給与が伸びなかったことは、まさに付加価値生産性の高い新しい産業やビジネスモデルを生み出すことが出来なかったこと、またそれを支えるような人材育成もなかったことが根本にある。
日本の産業構造は20年前と大して変わっていない。日本を代表する企業と言えば未だにトヨタ自動車である。一方、米国を見れば、自動車のGM1/、電機のGE2/、エネルギーのエクソンモービルは、もはや国を代表する産業や企業ではない。IT企業であるGAFA3/や自動車の産業構造を破壊したテスラがこれらに置き換わり、大きな付加価値と利益を生み出した。
日本も遅まきながら、岸田政権が経済財政運営と改革の骨太の方針を打ち出した。富の配分の原資となる四つの重点分野の中に、「人への投資」と「スタートアップ(新興企業)」の二つが入ったことは評価してよい、と私は思っている。
後は、具合的にその重点分野をどのように、そしていかに早く結実させるかだろう。欧米はおろか、中国、インド、韓国、台湾といった国々は、既にそれを実現してきている。しかも加速度的に、である。日本に十分な時間が残されているとは思えない。
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