TPP交渉、大筋で合意 (2015/10/6)

 

 

昨日、アトランタで開かれていた参加12カ国の閣僚会合で、環太平洋経済連携協定(TPP)がやっと大筋合意に至った。

 

農業問題を抱える日本は、TPP交渉参加を決める当時から、農業団体とそれを基盤とする議員から大きな反対があった。いつの時代、何処においても、既得権益を守りたいグループは存在する。交渉に参加した12カ国も多かれ少なかれ同じ問題を抱えているが、日本の場合は小数の既得権益者の声が大きな政治的影響力を持つという点で際立っている。

 

さて、大筋合意のニュースを受けて、メディアの取り扱いは、これで輸入肉が安くなる、一方、農家は大変な事になるといった表面的な話が殆どである。が、日本にとってのTPPの意義とは、環太平洋経済圏の市場統合による日本経済の合理化への道筋だと、私は思っている。

 

経済学者の間でも、TPPが日本に与える経済経効果は大きい、いや殆ど効果は無いと意見は分かれる。私にとって一つ言えることは、国内で守られていた既得権益の構造がTPPによって壊され、日本全体の生産性が上がる事への期待である。多くの日本人は、日本の経済効率は高いと信じているようであるが、それは一部の製造業、しかもその現場(工場)だけの話である。

 

中国に抜かれたとは言え、日本は世界第3位の国内総生産(GDP)を誇ると、皆さんが思っている。ところが、1人あたりGDPはシンガポールや香港を下回り、実に世界27位に過ぎない(図1参照)。その理由は極めて簡単、単に生産性が低いだけの話である。とりわけ既得権に守られた産業分野の生産性が恐ろしく低い。低い生産性は農業や医療分野に限った話でなく、ホワイトカラーにも当てはまる。

 

その低い生産性が、バブル崩壊以降、25年続いた経済の沈滞に表れている。日本経済が落ち込んでいるのは、老齢化と人口の縮小が原因と思っている人は多いが、そうではない。一番の理由は構造改革を先送りし、生産性を上げることが出来なかった事にある。それは、先進国間の比較で見れば一目瞭然。英国は1970年代、80年代に老大国、斜陽国家と揶揄されたが、様々な構造改革を進めた結果、現在の経済成長率は先進国の中で米国と並んで高い。2000年から2014年の間に、英国はGDP(実質)を27%増加し、米国は28%増加させた。ところが日本は11%増に過ぎない。日本の成長は米英の半分に満たず、そしてG5の中で一番のビリである(図2参照)。

 

経済が停滞し続けたことで、日本はいつの間にか思考が内向きになり、チャレンジ精神がなくなり、そして変化を嫌う国になってしまった。TPPの発足で、今までぬるま湯に浸かっていた一部の既得権益構造や閉鎖的な市場が壊されることにより、日本経済全体が活性化するならば、まことに結構な話ではないか。

 

 

 

 

 

 

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