東京中央郵便局再開発を巡る鳩山総務相発言 (2009.3.8)
かんぽの宿の売却問題に続いて、東京駅前にある中央郵便局の再開発問題で、鳩山総務相からまたもや強硬な意見が出た。彼の意見は、日本郵政は貴重な文化財として価値のある建物を壊し、金儲けに走ることは何事だ、というものである。
しかし、この発言にはかなり問題がある。まず、彼の意見が非常に感情的になっている点である。民営化しようという郵政の経営をどのように立て直すかという話と、文化的遺産の保全問題ははっきりと切り分けて考えるべきである。
前者の点については、事業収支を賄えるように郵政の経営を立て直すことが民営化の本筋であったはずである。そもそも、私は現状で日本郵政が民営化されているとは理解していない。なぜならば、郵政の全株式は政府が保有しており、まだ国有会社である(本当の民営化は株式上場された段階で実現される)。株主である政府の意向、というよりも政治の駆け引きの中で、その経営が左右されるのではあまりにも問題が多い。特に、郵政の経営に対する横やりは、郵政造反議員や旧郵政系官僚の陰がちらついていると感じているのは、私ばかりではあるまい。
後者の文化財としての問題については、丸の内地区の再開発問題は今に始まったことではない。同じように建築物の価値として評価の高かった旧丸ビル、旧新丸ビル、日本工業倶楽部、東京銀行協会ビルなどはすでに再開発されている。日本工業倶楽部と東京銀行協会ビルはまさに今回の中央郵便局の再開発と同じ手法で外観が保全された。
本当に建築文化財の保全を考えるのであれば、丸の内地区一帯の景観をどのように維持するかという視点で、都市計画として議論されるべきである。東京都の石原都知事は、鳩山発言を受けて「東京駅を中心に複合的なよい都市計画がある中で、あの建物だけ残すのはかなり無理」と言っているが、もっともな話である。
かんぽの宿の売却問題、中央郵便局再開発問題のいずれについても、鳩山総務相の横やりで物事がひっくり返るという事態は正常な姿ではない。かんぽの宿の問題では、郵政側が折れてしまったが、このようなことがあれば、次の入札をかけても、大臣の一言で契約が破棄されるのならば、応じる民間企業はいなくなるであろう。売却が遅れる間に発生する新たな損失を考えれば、傷口はますます広がっていく。
また、中央郵便局の再開発問題では、鳩山総務相は「損失が出ても残すべきか、利益追求のみで壊すのか、世論を聞いてみたい」と発言している。ここでも、その損失は結局税金で賄うのであり、国民につけが回るという視点が欠落している。