日中文学シンポジウム「食と文化」 (2015/11/27

 

 

今回のシンポジウムは、ここ数年途絶えていた中国作家協会との交流事業として、日中学院との協賛で行われた。私にとっても、日本ペンクラブの催し物に参加したのは、久しぶりである。

 

日中関係は政治的に未だにぎくしゃくしているが、今年に入り中国観光客の爆買いが話題となるように、少なくとも民間ベースでは交流が活発化してきている。遣隋使や遣唐使を持ち出すまでもなく、日中の文化交流には千年を遙かに超える歴史があり、その様な時間軸で見れば今の政治問題は僅かな出来事なのかもしれない。

                                                                          

基調講演では、ペンクラブ会長の浅田次郎氏が食をテーマに中国と日本との係わりについて話をされた。小説で見せる歯切れの良さとユーモアは彼の持ち味であり、微妙な話も笑いを取りながら流していく。

 

中華料理を嫌いという人はいないだろう。浅田氏のお説によれば、中華料理の大爆発はこれまで三度あったという。

 

明治から大正、すなわち19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて中国から日本にやってきた留学生は3万人を数えたという。彼らが日本に来て困ったのは食であった。浅田氏の言葉を借りれば、「日本の蕎麦は全然味がしない」、「日本のご飯はべちゃべちゃしている」。つまり日本食はちょっと口に合わない、彼らは食べるものに困ったというわけである。そこで自ら中華料理を作ることにした。その中華料理を食べさせる店が並んだのが神田のスズラン通りだそうである。神田の中華料理店は、安くて、美味しく、そしてカロリーたっぷりの中華料理を学生達に提供した。

 

第二の爆発は、戦後、中国大陸から引き揚げてきた日本人が中華料理を持ち帰ったことで始まった。そういえば、ラーメンは戦後一気に流行った食べ物だという話を聞いたことがある。

 

そして、第三の爆発が今。中国から多くの観光客が来たことで、日本風の味付けになってしまった中華料理ではなく、本場の中華料理の味を売り物にする店が次々と現れた。

 

一方、文化の話。政治と違って、両国の間には一貫して文化の共有がある。過去千年以上の時代の流れを超えた今でも、漢詩は日本人の教養の一つになっている。毛筆習字も教養、そして芸術の域に入っている。(ただし、どちらも私の苦手な分野ではあるが..

 

食と文化を見れば一目瞭然、政治がどうであれ、日本と中国の間には切っても切れない強い繋がりがある。

 

 

 

 

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