「寿司」警察 (2007/1/28)

 

たまたま、出張の機上で読んでいたフィナンシャル・タイムズの記事に面白いものを見つけた。題して「寿司警察」。著者は「Mariko Sanchata」と書いてあったので、外国の方と結婚された日本女性であろうか(ま、彼女の身上はどうでもよい話)。記事は、なかなか痛烈な皮肉である。

 

さて、この「寿司警察」の事の起こりについては、私のつたない記憶では、確か次のような経緯であったと思う。

 

今や海外では日本食が大ブームであるが、その半面、本物の日本食とは似てもにつかない「まがい物」があちこちで現れている。これは由々しき事態であり、日本政府(農林水産省)として、これは見過ごしておけない。海外の日本レストランの格付けをして「本物の日本食」守ろうと、お役人が言い出したようである。

 

このお役人にとっては、「いい加減な日本レストランの中には、昨日まで韓国料理や中国料理をやっていた者がにわか仕立てで日本食レストランを始めたり、全く板前の修行経験もない素人が日本食の看板を掛けたりしている。とんでもない話である」と、言うことなのだろう。

 

これに対して、マリコさんは、「では、イタメシ警察が日本の「明太子スパゲティー」を提供しているレストランに踏み込んだら、あるいはアメリカの料理人が「ライス・バーガー」を売っているファーストフード店を違法だと言ったらどうなるの」と皮肉っている。

 

確かにその通りである。そもそも食文化などというものは、時代とともに変わっていくし、他の国に渡れば、その国の食文化と融合して新しい味を作っていく。これこそ食文化の発展である。

 

別に日本食に限った話ではない。中国料理でも、フランス料理でも、それが日本に来た段階で日本人向けの味に変わってきている。私がその昔台湾で仕事をしていた時に、仕事仲間の台湾人に「もし、横浜に来る機会があったら、中華街に行ってごらん。台北に負けないくらい美味しい中華が食べられるよ」と言ったら、彼はなんと答えたと思いますか。「あんなもの中華料理じゃない。日本食の味付けだ。旨くもない」である。私は、少々落ち込んだ。

 

世の中、大方こんなものである。そもそも「本物の日本食」って何だろう。日本食の代表と言ってもよい「すき焼き」だって、明治以降に出てきた食べ物でしょう。「しゃぶしゃぶ」などは、年寄りに聞いても、あんなもの戦前にあっただろうかと答えるくらいである。

 

農水省のお役人風に考えれば、日本国内でも同じ事が起きている。今や大盛況の「廻る廻る回転寿司」も、寿司屋の職人に言わせれば「あんなもの寿司じゃねー」となる。でも、庶民は懐具合と相談して行く店を決めざるをえない。払ったお代に対して、「美味しかった」と思えばそれでよい。さすがに、農水省のお役人も、国内の「まがい物の日本食」を取り締まろうとは、さすがに言わなかったようであるが、税金を使って日本食文化を盛り立てようというならば、もう少し知恵の出しようもあるでしょうに。

 

ところで最後に、マリコさんの意見にもう一つ賛成。私も、アボガドとマヨネーズの入った「カリフォルニア巻き」は大好物です。

 

 

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