母子家庭の貧困
(2019/12/23)
今朝の日経新聞に最高裁が離婚後の子の養育費を計算する目安となる「養育費算定表」の改定案を纏めたという記事があった。これは2003年以来の改訂で、個々のケースによって異なるが、親の年収によっては月額1万〜2万円増額になるという。
日本の場合は、離婚後母親が親権を取ることが圧倒的に多く、母子家庭で子育てしているのが実態である。ちなみに、子供がいる家庭10世帯に1世帯が母子家庭であり、その8割が離婚、未婚と死別が1割弱ずつである。
離婚調停では子の養育費を定めるが、別れた父親から養育費が支払われているのは4人に1人でしかない。4分の3のケースでは養育費が踏み倒されている。
結局離婚後は、母親の肩に子の養育の重荷がのしかかる。
シングルマザーの就労率は高いが、男女賃金格差が大きく、彼女たちの多くは経済的に厳しい状況に置かれる。母子家庭の母親の年間収入の平均が200万円、持ち家比率は低く、預貯金は50万円未満の家庭が4割を占めるという数字がそれを裏付ける。(日経電子版2019年12月22日)
このように母子家庭が置かれる貧困の実態は極めて深刻であり、子供に十分な教育機会を与えることは、経済的に至難といえる。それがゆえに、シングルマザーの貧困の連鎖が生まれる。
シングルマザーの貧困対策の現状は十分と言うにはおよそほど遠い。
ひとり親世帯に対して「児童扶養手当」という子育ての支援制度があり、児童1人の場合、満額で4万2910円(全部支給という)が支給されるが、これには274万円という所得制限がある。274万円という所得は、正直1人の生活でも楽ではない。
別れた父親からの養育費は子育ての命綱となる。それが不払いで逃げられてしまっているのは、倫理的にも社会的にも極めて不条理と言わざるを得ない。
中央大学教授の山田宏昌氏の著書『結婚不要社会』によれば、スウェーデンでは国が離婚に伴う養育費を一度肩代わりし、父親から取り立てるという。我が国ではそのような制度的仕組みがない(唯一、明石市が支払われない養育費の立て替えと、父親からの回収を検討している)。
少子高齢化がもの凄い勢いで進むなか、政府は出生率の向上に力を入れている。
であれば、前述の児童福祉手当の制限緩和や養育費の不払いに対する行政の介入は是非とも進めるべきだろう。
これは、シングルマーザーに対する単なる同情ではない。
少子高齢化が急速に進む日本の現状において、次世代を担う子供達にいかに明るい将来を作ってやるかは、明らかに社会的な課題であり問題である。
貧困の連鎖を繰り返さないために、母子家庭の子供に対する投資は不可欠である。その子が大人になったとき、その投資は社会に還元される。子供が経済的な理由で教育や社会訓練の機会が得られないのは、大きな社会損失である。