出版社としての社会的倫理観 (2018/9/28)
「新潮45」が10月号の特集として自民党の水田水脈衆議院議員の擁護記事を取り上げた。言わずもがな、世間から嵐のような批判を受けることになる。この騒ぎ、9月25日に新潮社の社長が謝罪を行い、結局、「新潮45」を10月号で休刊するという落ちに至った。
杉田議員の性的少数者に対する差別発言はかねてから問題となっており、自民党内でも「少し発言を慎むように」という声があったと記憶する。しかし、依然として彼女のようなファシズムに繋がる思想に賛成する議員は少なくない。そもそも彼女は安倍首相のお眼鏡にかない、中国ブロックの比例単独第一位の座を貰った人物である。
彼女の思想とは、「女は子供を産め。個人の問題ではない。国のためだ。子供を産まない同性愛は生産性がない」というものである。そして、「そんな奴らに税金を使うな」という結論に至る。
今更ではあるが、これはヒトラーのナチスが謳った「アーリア人」優性の発想であり、同性愛者の逮捕とユダヤ人殺害につながる。日本でも戦時中の軍とその賛同者が声高に叫んだ「お国のために産めよ、増やせよ」と同じ発想である。さらに肢体に不自由があれば、お国の役に立たない不具者と蔑む。
水田議員の発言はマスコミで大きく取り上げられ、既に相当叩かれた。本人もこの件でマスコミから質問を受けても口を濁すようになっている。
冒頭の新潮社の問題に戻ろう。新潮社と言えば、出版界では堂々たる地位を築いており、それがなぜこのような醜態を演じたのだろう。新潮社に限らず、本離れが進む中で、「新潮45」も販売部数が落ち込み、その存続について経営判断の俎上に乗っていたようである。
「貧すれば鈍す」という言葉がある。恐らく「新潮45」の編集長は何とか売上を確保したくて、このキワモノ記事を掲載したのだろう。編集のチェックも甘く、騒ぎになっても何とかなるだろう。騒がれることで販売部数が上がれば儲けもの、という判断だったのだろうか。
結局、言論の自由を守るべき出版社が自らの顔に泥を塗る結果となった。
そして事が問題となった後、新潮社出版部文芸は次のようにツイートした。
「良心に背く出版は、殺されてもせぬ事」
新潮社の創業者の言葉だそうである。が、世の中にはこういう言葉もある。「覆水盆に返らず」