政治と経済の混迷 (2009/1/8)
景気対策、雇用問題の解決策が定まらないまま、年が明けてしまった。年末には、景気が急速に悪化するなか、住む場所、行くあてもないまま工場を解雇されたかなりの数の非正規労働者が、NGOが主催する東京の日比谷公園で炊き出しを受け、確保された宿舎でとりあえず正月を超すことが出来た、というニュースに、ことの深刻さを思い知らされた。
この非正規労働者の問題には、かねてから様々な議論があったが、一番の問題は、政府が職を失った際の雇用保険の適用や健康保険の確保といった問題で、十分なセイフティーネットの対応を取ってこなかったことにあると、私は思っている。ここに来て、与野党の間で非正規雇用制度の見直しを議論し始めているが、単に規制を強化し、製造業での派遣労働者の受け入れを禁止しても問題が解決するとはとても思えない。逆に、雇用制度を硬直化すれば、ますます雇用の機会を失うことにもなりかねない。
今は緊急対策が必要であり、明日の生活にも困っている人たちに支援の手を差しのべなければならない。評判の悪い(というより散々といった方がよいだろう)、総額2兆円にも上る給付金をばらまく余裕があるならば、国はその金を使って緊急対策として雇用の確保を考えた方が遙かに役に立つ。老人福祉の世界を見ても、人手は足りなくて困っている。2兆円の金があれば、一人あたり250万円を支払うだけで、80万人が一年程度働く場所は確保できる。当座の対応としては、その方がよほど意味がある。
本格的な景気対策を議論するならば、社会の構造を変え、新たな産業を興し、雇用を確保することを考えるべきである。この点で、構造改革はさらに進めていかねばならないが、残念ながら、今の麻生内閣にそのような発想があるとは思えない。景気対策の中で、一次は目玉のように言われた道路特定財源の一般財源化も、結局は骨抜きになってしまった。旧態依然とした公共事業で景気回復はとても望めないし、ましてや、新たな産業を興し、持続的に雇用を確保することなどはあり得ない。