『科学者はなぜ神を信じるのか』 三田一郎 20187月 講談社

 

 

科学に関心のある人向けに分かり易い内容で書き下ろした講談社ブルーバックスシリーズの一冊である。高校生の頃、いろいろと読んだものだ。

 

特定の宗教を信じる人が少ない日本人にとって、神の存在と科学はなにやら対立関係にあるようにみえる。宗教というと、非科学的と見做されることが少なからずある。

 

歴史を辿れば、科学は神学とほとんど同じ枠組みで発展してきた。神が決めたこの世の法則を解明してみようという好奇心からである。

 

地動説を唱えたコペルニクスは聖職者であったし、ガリレオはカトリック信者であった。教会との間の対立や葛藤はあったが、それが神の存在を議論するという対立ではなかった。天文学者ケプラーは、己の研究を神に捧げるものと考えていたという。天才ニュートンは極めて熱心なキリスト教であったことが知られる。そして電磁気学のマクスウェルもキリスト教の信仰を持っていた。

 

異色は、20世紀最大の物理学者アインシュタインである。彼はキリスト教に強い反発を持つ無神論者といわれる。

 

アインシュタインの相対性理論、その後の量子力学の発展の時代に入ると、これまでのニュートン力学の常識をこえる概念が現れた。質量は絶対量ではなくエネルギーの一形態である。時間は縮み、時空は歪む。光の速度だけが絶対量であり、相対的な速度は存在しない。

 

天文学の世界では、宇宙が膨張し続けていることがわかった。時計を逆戻りさせれば、宇宙は一点に収束する。それがビッグバンによる宇宙の始まりである。しかし宇宙の始まりに、二乗するとマイナスになる虚数時間方向という概念を入れることで特異点が消え、宇宙に端(始まり)はなくなる。いやいや、この辺りまで来ると私の脳みそでは追いついていけない。

 

天才ホーキング博士が残した言葉。「我々と宇宙は存在するのだろうか。もしそれに対する答えが見いだせれば、それは人間の理性の究極的な勝利となるだろう——なぜならばそのとき、神の心をわれわれは知るのだから」

 

この本、科学の歴史と理論の発展を興味深く教えてくれる。特に後半の、量子力学と天文学のくだりは科学好きには堪らない。ちなみに、この本の著者である三田氏は著名な物理学者であると同時にカトリック教会の助祭でもある。

 

 

 

 

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