参院選、一夜明けて (2010.7.12)

 

マスコミの予想通り、というより予想以上の民主党の敗北であった。新聞などは、第一の敗因を菅首相の消費税増税発言にあるといっているが、私には、問題はもっと根本的なところにあるように見える。

 

思えば、昨年の衆議院選で、民主党は地滑り的な大勝利を手にした。これも、自民党政治に嫌気がさした浮動票が民主党に流れたことが最大に理由であった。しかし、野党の立場であれば、当時の与党自民党と麻生内閣を非難すれば事足りたが、いかんせん政権を取った経験がなかったばかりに、鳩山前内閣はかなり迷走してしまった。マニフェスト、要はあれやこれやと公約をばらまいたが、政権当事者に替わった途端、そう簡単にはことが進まない。高速道路の無料化、土木公共投資の見直しも歯切れが悪くなり、ついには社民党に引っ張られた結果、普天間基地問題が鳩山首相の命取りとなった。

 

菅首相も消費税発言で波紋が大きくなると、低所得者に対する戻し税を口にするなど、結構脇が甘くなってしまった。それを契機に、民主党内に異論が出始めたのは、まさにかつての細川政権のつまずきを思い出す。

 

一般有権者から見れば、民主党に替わったのはよいが、今ひとつ政権担当者としての安定感がない。それが、最終的に今回の民主党の得票に大きく影響したのだろう。もし、消費税値上げに対する有権者の反発が理由というならば、自民党の谷垣総裁も消費税値上げの必要性を明確に発言しており、今回の自民党の勝利はあり得なかった。そもそも、今回の選挙の投票率は前回を下回り、60%を切っている。ある意味、国民の関心はそれほどなかったのかもしれない。

 

今のまま、菅政権が不安定で、思い切った政治的決断ができなくなれば、それこそが大きな問題となるだろう。おそらく、内政問題に汲々とし、とても思い切った外交政策は打ち出せない。実際、今回の選挙結果を踏まえ、海外の反応は、日本の外交が弱くなることと、財政再建と改革が遅れるという懸念を示している。

 

米国にしてみれば、当面、普天間基地問題は解決できないと見ているし、鳩山首相に期待して北方領土問題への解決に向けた踏み込みを期待したロシアもしかりである。民主党政権に期待感を持っていた中国政府とて同じことである。外国政府にしてみれば、今、日本政府と対話を始めても、来年にはまた首相が替わるのだろうというのでは、まったくお話にならない。

 

一方、国民の側も、言葉は悪いが、何でも政府が金を出してくれるという依存意識が高まっていることが問題である。子供手当は、まさにばらまきでしかなかったと思っている(麻生内閣が行った人気取りのための戻し税と大差がない)。子供達の教育問題は大切であるが、同じ金を使うならば、もっとほかのやり方があるであろうに、と思うのは私だけではあるまい。

 

消費税の値上げについても、福祉や年金に使途を限定するならば納得するという意見は多いが、税制改革は少なくとも50年くらいの時間軸で見なければならない。一方、年金や老人福祉は喫緊の課題ではあるが、50年後まで同じ状況ではない。およそ、一度目的税を導入すればそれば、それが政治や行政の利権の温床になることは、歴史の自明である。

 

 

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