プーチンの戦争で加熱するロシア経済 (2023/12/11)

 

 

年明け2月には、ロシアのウクライナ侵略から2カ年が過ぎようとする。今年6月からウクライナ軍の反転攻勢が始まったが、当初のねらい通りには進まず、戦況はほぼ膠着状態となった。

 

プーチン大統領には、この戦争で妥協するつもりはない。国内の締め付けを強め、次の大統領選挙に出馬することを自ら表明した。今のロシアに公正な選挙などあるはずもなく、彼は圧倒的な得票率で当選するだろう。反対者は候補になることも出来ないし、そもそも出馬を口にすれば身の危険が及ぶのだから、当たり前の話である。

 

ロシアのウクライナ侵略が始まった時、西側はロシアに対して原油の禁輸、資本の撤退などの制裁を加えたが、今のロシア経済には当初期待したような落ち込みはない。国際通貨基金(IMF)は、この10月に見直した世界経済予測で2023年のロシアのDGP成長を7月の見直しに比べて0.7ポイント引き上げて2.2%2024年は0.2%引き下げて1.1%とした。

 

ロシアの経済成長率は、2023年の数字だけで見れば、米国、英国、ユーロ圏、そして日本を上回る。その理由は、原油価格がロシアにとって順調な水準にあり、潤沢な原油収入を戦争継続に必要な武器と弾薬の生産につぎ込んだ結果である。

 

その一方で、2023年に入り急速なインフレが進み(図1)、中央銀行は金利を上げインフレを抑えようとしている(図2)。直近の10月で見れば、対前年比でインフレ率は7.5%、政策金利は年15%にまで高まった。いくらGDP成長率が2.2%になるといっても、高いインフレと金利の下で、庶民生活に影響が出ないはずがない。

 

現在のインフレはルーブルの弱さがもたらした結果である。食料品を除いた消費材の多くは輸入品である。ルーブルの対米ドルレートは戦争前に比べ三割ほど下落し(図3)、もろに物価を押し上げた。

 

戦争により、ロシア経済は今や極めて加熱している。プーチンは戦争を継続するため、2024年には軍事予算を倍増しGDP6%をつぎ込む。つまり財政支出で経済成長を支えようとする。

 

高金利はインフレを抑えるし、需要も抑える。しかし、この金融政策はプーチンの思惑とは相容れない。彼はウクライナ戦争に勝利するために、今後も財政支出を拡大する。それによってインフレは更に進む。金融政策と財政政策が矛盾を起こす中で、ロシア経済の安定はとても望めない。

 

 

 

 

 

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