落ち込み続けるロシア経済 (2023/10/1)

 

 

ルーブルはロシアがウクライナに攻め込んだ直後、1ドル=100ルーブルまで下落したものの、その後60ルーブルまで持ち直した。しかし、昨年12月から再び下落し始め、現在はほぼ100ルーブルの水準にある。(図1参照)

 

確かに外貨の多くは石油輸出で稼いでいるので、ルーブルに換算すれば多くの収入に結びつくが、半面、ルーブル安は輸入品の価格を押し上げ、国内のインフレを煽る。昨年の経済指標を見ると、消費者物価は14%上がり、GDP2%の下落となった(この落ち込みは、当初予想していたより小さなものではあった)。

 

このままルーブル安が続けば、インフレも進む。ちなみに、年初からこの9月までの消費者物価の上昇は5.4%で、7月時点の4.3%を上回っている1/

 

中央銀行はインフレを抑えるために、金利を引き上げた。815日、ロシア中央銀行は金融政策決定会合を開き、政策金利を3.5%引き上げて年12%にすると発表し、同日実施した。7月の会合で決定した引き上げ幅1%に比べ、これは大幅な引き上げである2/

 

金利の引き上げは経済成長を押さえる。これは当たり前。企業にとっては借入金利が上がり、庶民にとっては住宅ローンのコストが上がる。

 

プーチンが起こした戦争は今やルーブル安とインフレ、そして金利高という状況を作り出した。

 

政府の歳入の多くは石油収入に頼っている。確かにロシアの石油輸出は西側の制裁に係わらず落ちていない。EUへの販路は閉ざされたが、インドや中国への輸出は増加した(IEAの推計では、輸出の八割がインドと中国、残りはトルコや旧東欧諸国とみられる3/)。しかし、制裁のお陰でロシア産石油の価格は割り引かれ、金額では落ち込んでいる。

 

今年の政府財政赤字は、上半期で28170億ルーブル(約41547億円)に達し、既に昨年の赤字額32950億ルーブルを越えた4/

 

プーチンに戦争を止める気はない。今後も軍事費は増え続け、財政を圧迫する。信用を失ったルーブルの下落、財政赤字の拡大、そしてインフレが進行するなかで、ロシア経済の先行きは明るくない。

 

 

 

            1/         The Economist (2023/9/30)

            2/         日本経済新聞(2023/8/15

            3/         日本経済新聞(2023/8/11

            4/         毎日新聞(2023/8/9

 

 

 

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