企業の高額報酬 (2015/6/27)
日本の経営者の報酬が欧米の企業と比べて低いと言われ続けてきたが、最近はそうでもない事例が増えてきている。
今朝の朝日新聞に「巨額報酬、日本企業でも次々「プロ経営者」引き抜き、社員の士気心配」という見出しで、関連記事が出ていた。高額報酬のトップはソフトバンクのニケシュ・アローラ副社長の165億5600万円、そこまでは及ばないが、日産自動車のカルロス・ゴーン社長も10億3500万円で名を連ねている。
新聞記事としては、何となく羨ましさ半分、妬ましさ半分という感じを受けるが、それを代弁しているのは、記事の最後にある文教大の山崎佳孝教授のコメントである。曰く、「『頑張ってもトップになれない』 と社員の士気が下がる恐れがある。社内に対し、求める経営者像を明確に示すことも重要だ」と。
この方、実業の世界に身を置いた経験があるのかないのか、私は知らないが、企業のトップに求められるのは経営能力である。社内でこつこつ頑張ればトップになれると思っているならば、それは昭和の時代の幻想でしかない。
冒頭で日本経営者の報酬が低いと書いたが、日本の経営者でその能力が国際的に通用する人物は多くない。大方のトップは、報酬相当の仕事しかしていなかったということだろう。日本的な合議主義と稟議書で会社を運営し、判子の数に反比例して責任を曖昧にしてきたのだから、報酬が低いのは当たり前である。
海外の企業を見れば、生え抜きのトップは少数派である。経営能力を見込んで事業運営を任されるのだから、至極当たり前の話である。日産自動車のゴーンさんは、大学を出てミシュランに入った。ミシュランでの業績が買われて、ルノーに引き抜かれている。1990年代にダウンサイジングの波に乗ることが出来ず業績が悪化したIBMの経営を再建したルイス・ガースナーも、経営者としていろいろな企業を渡り歩いている。大学卒業後、マッキンゼーに入り、その後アメックス、ナビスコ、そしてIBMへと移っている。彼らに求められた能力はあくまでも経営能力であり、個別企業の細かな実務知識ではない。
トップの報酬を見て仕事のモーティベーションを下げるようであれば、今の時代、とても企業内で生き残れない。いまだに年功序列と終身雇用を信じているとすれば、それはお生憎様である。それ以上に、貴方と同期入社の人と10年後の給与を比べたら、倍半分の違いが出ていたということも普通に起きているかもしれない。